「明るい笑顔のANA」に対し「機内でもなにやら暗いJAL」というのが長い間の利用者からの代表的な声でした。その背景を垣間見るような判決です。
解り易く申し上げれば、もともと日本航空の労働組合は、現在のANAとほぼ似ていて、地上スタッフ(人事・総務・営業などの本社部門/整備部門/客室乗務員)をその構成とする「日本航空労働組合」とパイロット・航空機関士・ナビゲーターなどで構成する「日本航空乗員組合」でした。
ここから先は、映画「沈まぬ太陽」で描かれていたストーリーに近似値です。
経営側に篭絡されたグループが「現場の声」を消し去って「何でもそのときどきの経営方針に従って行く」そういう労働組合を新たに作りました。いわゆる「御用組合」ですね。
勿論、こういう行為は、憲法で保障された「労働三権」「労働三法」を犯す行為で一般的には「不当労働行為」と言われています。
映画では、三浦友和さん扮する「行天四郎」がこうした動きの代表格として描かれました。
そして、その当時「全日本航空労働組合」(※その後名称変更してJALFIOと名乗ってきました。下記報道にある「JAL労働組合」を指します。)が誕生しました。客室乗務員も「日本航空労働組合」に属していましたが、組合脱退を迫られて、「日本航空客室乗務員組合」という職種別組合を作らされることになります。
私は、この直後に入社をいたしました。
しかし、なかなか経営陣の思うようにはいかない訳で、この「客室乗務員の群れ」も、航空機が巨大化(ダグラスDC-8中心からB747ジャンボ機へ)することで必然的に短期間に在籍者が多くなってきました。平均的に言えばその当時のJAL本体は2万名でそのうち3000~5000名が客室乗務員という構図でした。
この時代は、日本航空協力の下に映画「白い滑走路」「アテンションプリーズ」が製作されました。
「ニューデリー事故」「モスクワ事故」「クアラルンプール事故」といわゆる三大連続事故が発生、いずれも「墜落」したもので、多数の乗客乗員を失いました。
「ニューデリー事故では、離着陸時に着物を着用していた客室乗務員だけが、歯形しか残らないで燃えてしまった、という惨事でした。
また、女性地上スタッフは男性並でも、客室乗務員は、「結婚したら」「30才になったら」退職せねばならない、という社内規則がありました。このため多くの素晴らしい人材が泣く泣くやめて行きました。
ジャンボ機が導入された初期は、機内の編成人員は、「17~19名」でしたが、これを2名減らして「15名にする」という経営陣の提案が出てから、機内の現場は騒然となりました。
もともと御用組合として出発した「客室乗務員組合」が賃金は別にしても、「明らかな旅客へのサービスダウン」には、「反対」の意思表示をし、スト権を発議するまでに至りました。
このことは、全社員の4割ぐらいを占める人数であり、ストライキでも決行されると航空機が止まるという勢力でもありました。
「これは、大変!」と経営陣とJALFIO(JAL労働組合)幹部が癒着して、「新入CA社員は全部JALFIOに入らなければ、一人前のCAとして認めない」というシステムを作り、客室乗務員組合の構成員を増やさないように、もうひとつの組合創りを致しました。時間をかけて「組合つぶし」をするという方針でした。
1970年代から「ジャパン アズ ナンバーワン」といわれていた時代の陰でこういうことが延々と行われてきた訳です。
こうした経緯のなかで、「9800人の監視ファイル事件」が露見してしまいました。
裁判官は、JAL労組のプライバシー侵害などを認めたものの会社とJAL労組が癒着した証拠がない、ということを言っておりますが、「問題から目をそらす」姿勢ともいえるのではないでしょうか。
JAL労組:敗訴 個人情報無断収集で慰謝料支払い命令
毎日新聞 2010年10月28日
日本航空(JAL、会社更生手続き中)の最大労組「JAL労働組合」に個人情報を無断で収集・電子ファイル化されたとして、客室乗務員ら193人(うち1人死亡)が同労組と当時の労組幹部5人に1人1万円の慰謝料支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は28日、全額支払いを命じた。青野洋士裁判長はファイル作成がプライバシー侵害にあたると認め「不安感を抱かせるなど精神的苦痛を与えた」と述べた。
判決によると、JAL労組は96年以降、日航から公式提供された氏名などの個人識別情報に労組独自の情報を加え、退職者を含む客室乗務員9862人分の電子ファイルを作成した。ファイルには人事考課や家庭環境、病歴、思想・信条などが記載されていた。
労組とともに提訴された日航は、原告側の主張を認めないまま1人につき慰謝料など22万円を支払う意向を示し訴訟から離脱。原告側は「日航も一体となってファイル作成にかかわった」と主張したが、青野裁判長は「証拠がない」と退けた。
飯田幸子・原告団事務局長は判決後の会見で「労組による人権侵害と違法行為を断罪することができた」と語った。
【和田武士】
