~長期的な政策のない、泥縄の「支援」で、大丈夫でしょうか~
航空需要の著しい後退は、まさにアメリカの「サブプライム問題」「マネー至上主義の破綻」からの影響をじわじわと受けてきていることは、間違いのない状況でしょう。
ウォールストリートの金融工学なる看板に彩られてはいたものの、金融に対する「規制緩和」は、焦げ付きがわかっている住宅ローンや自動車ローンを「AAA」と格付けされた「証券」に仕立てて、世界中にばらまきました。今でも、その被害損失は、「カウントできない」という奥の深い有様です。
日本では、こうした「証券」に巨額な投資をしていた「銀行」「損保」が1000億円を超える巨額な赤字を出していることが明らかにされてきています。おまけに、アメリカだけを見て「拡大」を続けてきた「自動車」「家電」「カメラなどの光学機器」は、軒並み討ち死に状況です。一部には、「メディア」が不景気を煽っている、などという意見も散見されますが、「この事態の深刻性」から目をそらすだけのこととも思えます。
さて、航空については、どうかといいますと、「危機」の始まりは、
1970年のカーター大統領の当時に、アメリカが発した「航空の規制緩和=デ・レギュレイション」にありました。アメリカ国内では、めちゃくちゃな「格安運賃競争」が始まり、同時に「事故続発の安全運航の低下」という事態を招きました。国際線に多くの路線を持ち、公共交通機関の役割を果たしてきた「パンナム」などアメリカの顔と言われてきた巨大航空会社の倒産が続出しました。
このときは、「格安航空会社」が一時的にハイライトを浴びた瞬間は、あったものの、やがて業界は「デルタ航空」「ユナイテッド」「コンチネンタル」「アメリカン」などの寡占状況を現出させただけで、肝心の「航空運賃」は、「規制を緩和して、自由競争にすれば、運賃は安くなる」というキャッチフレーズとは、180度違って、前よりも高くなっていたという歴史があります。
なんと、航空は、20年以上も前に「アメリカ自動車ビッグスリー危機」「サブプライム」の原型ともいえる「ラーニング」をしているのです。
つい最近まで、アメリカやEUの圧力を受けて「オープンスカイ」とか「アジアゲートウェー構想」など、耳に優しくすべてが「バラ色の未来」を約束するような論議がまかり通っていました。
本当は、日本の「翼」が持つアジアにおける輸送力、太平洋(ハワイ・米国西海岸など)への圧倒的シェアに殴り込みをかけられている状況であることは、隠されているように、あまり解明されることはありませんでした。
急成長しているアジアのエアラインも含めて、ナショナルフラッグといわれる世界の名だたる航空会社は、国家的支援を強く受けて、「機材更新」をはかり、美味しい(収益性の高い)エリアへの進出を虎視眈々と狙っています。当然といえば当然ですが・・・。
こうした情景の中で、迎え撃つ日本の空は、どうか、といいますと「背筋が凍る」思いがいたすほど、「貧弱」な体制です。
まず、1機100億円以上もする「新型機」を数十機単位で購入を予定」し、費用がかさむことばかり計画していました。これは、JAL・ANAともです。その効用は「ダウンサイジング」=比較的新しいジャンボ機などもすべて退役させ、燃料効率の良い、運航効率の良い「中型機」に変える」という「呪文」のようなフレーズを奉っておりました。
航空機の機材更新問題にしても、一民間企業がやりくりできる規模を遥かに越えているのではないでしょうか。
現場からは、メンテナンスをしっかりすれそこまで無理をしなくても現有機の活用で、行ける、という多くの意見があがっていたにもかかわらず、こうした方針をおしすすめてきました。もちろん政府公認です。
JALといえば、「御巣鷹山」をはじめとして、ニューデリー・モスクワ・クアラルンプールの三大事故などの教訓もありながら、依然として「何でもいうことを聞く組合保持」のためには、法律違反もいとわず、という政策は転換せず、「モチベーションは低下の一途」、その上、JASとの統合で、「元JAL・元JAS」社員の待遇アンバランスによる軋轢もあわせてもっている状況で、内情は、めちゃくちゃともいえる状況です。
ANAは、これまで、「あまりにひどいJAL」との比較で、「良い雰囲気」と受け止められていましたが、「JALに追いつけ、追い越せ」できた超拡大路線にも、ややかげりが見えてきています。ANAのCAなどは、あまりの低労働条件に辞めてゆく者も多く、再就職の先がJALグループのJALウェーズに集中しているといいますから、驚きです。
いずれにしても、世界と戦える「日本のエアラインはどうあるべきか」「国家としての肩入れをどのようにするか」という長期的視点が欠落しています。
1987年に「日本航空法」が廃止され、日本航空は、完全民営化されました。これは、本当に正しかったのでしょうか。
厳しい監督下にあった「日本航空」は民営化したことで、「何でもやれる」とばかりに、航空運送業の使命から逸脱し、本業で上げた利益を、バブル化に「NYCのエセックスハウス購入」「ハワイのコオリナゴルフ場開発」「SST開発」などにつぎ込み、その上「10年固定のドルの先物買い」というギャンブルをやって、カウントできるだけで「3000億円以上」の損失を出しました。
これは、「損害額」だけでなく、何をやっても責任を取らなくてよい、という風潮を残し、今に至るも健全経営へのボディーブローとして、効いています。
ちなみに、歴代経営者は、誰一人としてこの責任を取った者はおりません。まさにやりっ放し状態で、この一方でで社員には、「給料カット・早期退職」を強いている上、西松社長は「社員が当然のことをやれば、大丈夫だ。」などとこれまでのことは、すべて現場の社員に問題があった、とも受けとられかねないことを堂々と発言しています。
~この厳しい情勢の中では、JAL・ANAの分担を明確化すべきでは・・・~
国内線は、すべてANAが担当し、国際線は、政府の指導バックアップのもとに「JAL」が担当するなどの大胆な構えなくしては、世界と戦えないのではないでしょうか。
<航空業界>国が支援へ 年度内に具体策…金子国交相
2月4日20時45分配信 毎日新聞金子一義国土交通相は4日、需要の急激な落ち込みで業績が悪化している航空業界に対し、年度内に支援策をまとめる方針を明らかにした。定期航空協会の西松遥会長(日本航空社長)らが同日、政府支援を要請したことを受けたもので、金子国交相は「しっかり支援する」と述べた。
具体策は国交省と同協会が協議するが、空港の着陸料や航空機燃料税の軽減、採算のよい羽田空港の発着回数拡大なども検討対象になるとみられる。航空会社には「現時点で資金繰りの問題はない」(国交省幹部)が、今後の環境次第では資金支援も検討される可能性がある。
国交省は新型肺炎(SARS)で国際線需要が落ちた03年も業界への緊急支援を実施。税軽減、日本政策投資銀行による緊急融資、発着枠の一時的な規制緩和などを行った。
航空業界は世界的な景気後退で旅客、貨物とも輸送量が急減。09年3月期連結決算で全日本空輸が100億円の経常赤字を予想しているほか、日航も赤字転落の可能性がある。【位川一郎】
