新規「LCC」は軒並み損失!「格安航空」礼賛政策の行方・・・!

半年ほど前、格安航空に勤務する知人と話をする機会を持ちました。ロードファクターの好調さ(70~90パーセントという報道など)を聞いていた私は「損益か経常収支か、四半期あたりの決算などでは儲かっているの?」と尋ねました。知人は、「社内ではそういうことはまったく知らされていない」ということでした。そして・・・。

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エアアジアジャパン消滅

一方で2013年7月には、「エアアジア」が「エアアジア・ジャパン」から手を引くということが決まり、ANAがバニラエアとして再出発するというニュースが伝わりました。理由は「エアアジア流の売り方では、お客を集められない・・つもり収支の向上が見込めない・・・つまり日本市場では商売にならない」と決断を下した模様です。

ジェットスターも大赤字で増資

オーストラリアのナショナルフラッグであるカンタス航空が率いる「ジェットスター」その配下である「ジェットスター・ジャパン」も人気路線でのロードファクターは上がっても全体では経費倒れになってきているのが実状のようです。

LCC対策の歴史を紐解けば・・。

国際航空運賃の価格破壊は、アメリカを代表していたPANAM(1945年のIATA設立メンバー)はじめアメリカン・デルタ・ユナイテッドなど大航空会社がIATA(国際航空運送協会)の運賃に従わない、ということが始まり、さらにカーター大統領による「航空規制緩和・ディレギュレーション」で格安運賃競争となり、パンナム・ウェスタン・イースタン・TWAなどが破綻しました。その後アメリカでは事故が重なり、「新たな安全規制強化」がはかられるようになりました。その象徴は、権力から独立した「NTSB事故調査委員会」や[FAA連邦航空局」に見られます。

その後アメリカでは「サウスウェスト・ジェットブルー」など国内線で同一機種を用いて整備・訓練などを合理化し、かつ専門の路線を頻繁に飛行する、などで大きな飛躍を遂げました。しかし、路線別の搭乗率にかかわらず広いネットワークを持つことを使命としている国際線各社は、一度は「財政破たんでチャプターイレブン(連邦破産法)入り」しています。

LCCの発達は国や地方によって違う

このように、広大なアメリカでは、工夫を重ねた発達がありました。ヨーロッパでは国際線といってもほとんど国内線並みの地形に合ったLCCの激化・発展が長い時間をかけて行われました。「ライアンエアー」などが有名です。

EUでは経済危機を抱えている中で国際線といえども、いわゆる「ナショナルフラッグ」というとらえ方をやめて、オランダとフランスが「KLMエールフランス」を形成し、ルフトハンザのもとにスイス航空・オーストラリア航空などが集結している状況です。

アジアでは、特にマレーシア・シンガポール、インドネシア、タイ、フィリピンなどのアジアは地勢的に「島と島」を結ぶ交通機関であった船に代わり、1000円ぐらいから乗れる「LCC」があっという間に発達しました。シンガポールを拠点とした「エアアジア」オセアニアを支配するカンタスジェットスターはその雄ともいえます。

また、ネットワークを持ちつつコストダウン!という狙いで国際的な航空連合「アライアンス」が現在では、国際線の雌雄を決する事態ともなっています。

ちなみにANAは、「スターアライアンス」JALは「ワンワールド」このほかに「スカイチーム」があります。

ニッポンのLCCと空港と航空路

10年ほど前からアジアでは、航空が大きく進みました。その前線基地はインフラです。空港の規模が「成田空港」が出来上がり国際線が羽田から成田に移転した当時からもう離されていたという状況でした。シンガポール チャンギ空港などは、当時のフランクフルトアンマイン空港の規模を除けば、当時のアメリカヨーロッパの空港群と見劣りがしませんでした。日本では、政治的な過ちを繰り返したことで、成田開港が1978年と遅れ、開校した時にはCIQなどの諸設備でももう後れを取っていました。

また、開港へ向けては、東北新幹線などと同時期に「東京成田の新幹線」を開通させる計画でしたが、この遅れが今も利便性という点で後遺症となっています。

※ 空港整備特別会計

空港というインフラを整備したり管理するために、空港使用料・のちに加えられた航行援助施設料などの税金に加えて一般会計予算からも1100億円合計3200億円ほどの収入で「空港整備特別会計」→2008年から「空港整備勘定となる」で運営されています。

アメリカとの貿易摩擦で「ボーイング社の航空機を多量に購入した」ことで、購入した航空機に応じた滑走路の合計が必要となり、全国に「99」もの空港をつくるという政策がとられることとなりました。この費用は、この特別会計で運用されました。

この一方で、アジアに伍する様ないわゆる首都圏「ハブ空港」としては、「羽田」「成田」の発着回数を増やす、滑走路を増やす(羽田は4本、成田は2本)などを政策化して、一度は「成田国際」「羽田国内」に分けたものを再び「羽田の国際化」「成田から国内線をつなげる」というふうに変化してきました。

ハブ空港という考え方

ハブ空港という視点から言えば、アジアにおいては日本は大きな後れを取りました。先ほどのシンガポールでは、1981年「パヤレバ空港」から現在の「チャンギ空港」に、香港はカイタック(啓徳)から1997年「香港国際空港(チェク・ラブ・コック)」に、2001年韓国には金浦空港に加える形で仁川インチョン国際空港を、また、1999年北京ではこれまでの空港に大改修を施し世界第2位の旅客数を誇る「北京首都空港」へと変身しました。上海では、「上海虹橋空港」に加えて1999年に「上海浦東(プートン)空港」が開港。クアラルンプールでは、「スバン空港」から1998年現在の「森の中の空港・空港の中の森」と詠われる「クアラルンプール国際空港」が開港しました。2006年 タイでも「ドンムアン空港」から「スワンナブーム国際空港」へと華やかに拡大されました。

まさに、アジアの経済成長は先を見通した「空港整備」から始まって現在があるといっても過言ではありません。日本の場合、航空政策が政治に弄ばれた結果、客観的には「首都圏の国際線空港」の機能としては、いささか見劣りがいたします。

国交省の空港の規模から言いますと、拠点空港の中で民間管理空港は成田・中部・関空・伊丹の4か所、国管理空港は千歳・羽田・福岡・那覇はじめ26か所あります。9月10日の国交省発表によれば、国管理空港のうち黒字は、「新千歳、小松、熊本」の3空港だけということです。

話は戻りますが、日本の経済成長、アジアでの占める位置からすれば、「アジアの拠点・ハブ空港」として「どこに資本を投下すべきだったか」は明らかだと思います。

「アジアゲートウェイ」と「オープンスカイ」

さて、「アジアのLCCがやってくる!大変だ!」といいながら、2007年「アジアゲートウェイ構想」という政策がとられ「空港」と「エアライン」が合意すれば、「自由に運航できる」ということになりました。しかし、肝心な羽田や成田などは、スロット(発着枠)が足りないうえ、発着料金も高く、「自由に運航できる」という実態にはなっていません。

また、アメリカとの不平等な航空協定を是正できないまま、2010年「オープンスカイ政策」を取ったため、日本のエアラインの主たる収入源だった「太平洋路線」「アジア路線」も競争が激化してきました。

LCCの現状と問題点

収入面でいえば、ドル箱路線である国内幹線は、JALとANAがそびえたち、「スカイマーク」「エアドゥ」「スターフライヤーズ」「ソラシドエア」などのこれまでの「格安航空」そして成田を拠点とした「JAL系ジェットスター・ジャパン、ANA系エアアジア・ジャパン→バニラ・エア」の攻防、健闘する「ピーチ・エア」そして中国の春秋航空韓国の「チェジュ航空」などなどまさに入り乱れて、「際限のない格安合戦」に突入しています。

安全は??

この一方で、自由競争ができるように!外国のLCCと戦うために!という大義を掲げて、航空法の規制緩和も10年来続いてきました。

安全に直接かかわる部分も

・キャリーオーバースタンダードの緩和(故障しているパーツや箇所があっても直さなくても運航できる範囲)・整備の条件緩和・・・(エアラインが重要な整備までも外国に外注することができるなど)整備士の配置人数の緩和、整備士の資格制度変更などなど。

近年では、一日に離着陸できる回数を増やせる・機材を連続して運航できるように、LCC対策として「飛行間の整備点検はいらない」「旅客が搭乗中に燃料を入れてもよい」などの緩和を行いました。

そして最近、ジェットスター・ジャパンやエアアジア・ジャパンで「法定の整備点検を7~8か月も行っていない」ことが発覚し、航空局から厳重注意を受けるに至りました。

「成長戦略」といいますと額面だけ取れば、期待を弾ませたくなりますが、これまでの航空における「成長戦略なるもの」は、地方空港における需要予測といい、アジアの伸び方に対するインフラの在り方といい、まるで20年は遅れてしまっているものです。

現在、有識者も含めて「産業競争力強化法案」なるものが国会審議されているようです。航空の二の舞をすることなきよう祈るばかりです。

「過密化している日本の航空路」については次回にまたお話しいたします。

 

 

 

 

 

 

 

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