「格安礼賛」と「安全軽視」は、裏と表の関係なのに・・・。スカイマーク問題

Nhk_10

4月6日OA「NHKニュース9」より

~「安全」に対するメディアの追及は、もう少し深くあってほしい~

核密約問題では、本日4月9日、歴史上初めて「政府・外務省を司法が裁く」という判決が出た状況もあり、「見えないところでよろしくやる。」ということが許されない雰囲気も生まれています。

こうした中で、航空界は?といえば、国交省が安全の規制緩和を粛々とすすめる一方で、メディアは「格安運賃」と引き換えに「安全への危機が増している事実」については、あまり「核心」を衝く追及をしないまま、現在に至っています。

スカイマークでは、2008年6月、「160便もの大量欠航」を出した背景には、会社の運航方針を批判して退社した機長が出たこともあるとニュースで報道されています。

3週間行われた「特別安全監査」の中には、コックピットへの監査もあったはずですが、航空局CABのチェッカー同乗した折に「操縦席で、規定に反し酸素マスクを着用していない」「着陸進入方式に不慣れで、不安定な着陸進入があった」などもあげられており、絶句する中味です。旅するデジカメ・札幌発 参照

こうした中で、スカイマークの「コックピット・キャビン・整備のすべてに及ぶでたらめな運航実態」は、発生しています。

スカイマークをめぐっては、飛行中の操縦室内で乗務員らが記念撮影をしたり、高度の設定ミスなどの安全上の問題が三月中に三件発覚。国交省は同社に三週間の特別安全監査を実施していた。同社は四年前にも業務改善勧告を出されている。

 国交省によると、外国人操縦士が操縦室から機内の電話で客室乗務員を呼び出した際、英語力のある客室乗務員以外の三人が、英語が苦手なことを理由に電話に出なかったことがあった。この件は社内でも議論されたが、抜本的な改善は図られなかったという。

 また離陸前に酸素マスクや救命胴衣の着用方法を説明する客室乗務員を三人から二人に減らしたため、後方の乗客から「見えない」などの指摘を受けていたことも発覚した。

 さらに、高度三千メートル以上を飛行中は、二人の操縦士のうち一人がトイレなどで操縦室を離れる場合、もう一人が急な減圧に備えて酸素マスクを装着しなければならないが、守られていなかった。整備上の問題では、乱気流に遭遇した後などに実施する機体の点検作業が不適切なことがあった。国交省は、同社に十三日までに改善計画の提出を求めている。(毎日4月6日)より。

Nhk_7

NHK「ニュース9」より

スカイマークが4月13日に「業務改善計画」を国交省宛に提出する、ということですが、パッチ当てのような「改善計画」では、問題の解決にはなりません。どのような「姿勢」が出るのか、注目に価するところです。JALの場合でも具体的かつ膨大な改善仕様が出されておりました。

公共交通機関、それも、事故となれば一瞬にして大量の利用客の生命が奪われるという航空においては、「利用客がチェックすることができない安全」は、政府国交省が目を光らせる役目です。「安全軽視」には、厳しい処断を願うものです。

2004年~2005年の「JAL連続ミス・トラブル」の時には、「事業改善命令」まで出されました。その時、形式的に以下のような「改善報告」なども、盛られました。

~2005年の「事業改善命令」に対しての「JAL改善計画」~

今から5年前、JALは、事業(会社の運営方針)に対しての改善命令を受けました。このことで、下記のような膨大なかつ言葉としては、立派な「改善計画」を国交省宛に提出していました。この一方で、ずさんな経営、相変わらずの運航現場のコストカットにばかり精を出しました。

2005年04月14日
   
「事業改善命令」「警告」に対する改善措置について  (JALプレスリリースより)

 多くのお客様の生命や財産を預かる航空運送事業者たるJALグループにとって安全運航の堅持は存立基盤そのものであり、社会的責務であります。しかるにこの度、安全上のトラブルを連続して発生させ、国土交通大臣より「航空輸送の安全確保に関する事業改善命令」および「警告書」を受けるに至りましたことについて、経営はじめ社員一同、重大に受け止め、深く反省しております。

 社長はじめ経営に携わるもの自らが先頭に立ち、強い意思とリーダーシップをもって、グループをあげた安全体制の再構築に取り組み、お客様はじめ広く社会からの信頼回復に向けて全力を傾注してまいります。

1.要因・背景分析および経営として反省し改善すべき点

〔1〕要因・背景分析

 この度の安全上のトラブルについて、社会からの厳しいご指摘を真摯に受け止め、個々の事例分析のみならず連続したトラブルに共通する要因が何か、さらにはその要因を生じた背景が何かという観点から、現場を預かる責任者および各部門の安全担当者を交え議論を重ねてまいりました。 その結果、以下のとおり共通する要因があったと考えております。
(1)安全性に対する認識不足

(2)情報の迅速かつ的確な共有の不足

(3)定時性の確保、時間制約からのプレッシャー

 このような要因は、今般の事例に特有に生じたものではなく、以下の背景から生じたものと考えております。

(1)いかなる環境下においても安全が最優先であることをグループ全体に常に強調し浸透させる経営の取り組み    が不十分であった。

(2)定時性向上に取り組む中で、安全が大前提となった定時性向上という認識がややもすれば弱まり、安全と定時性を安易に両立させようとする風潮を現場に生じさせた。

(3)経営統合の過程として持株会社と二つの事業会社という枠組みの中で、経営と現場との距離感および部門間の意思疎通の不足が生じていた。

(4)安全を直接支える現場に対する経営トップの双方向コミュニケーションが不十分であった。

〔2〕経営として反省し改善すべき点

このような背景が安全に与える影響を重大に受け止め、経営が先頭に立って以下の改善策を推進することといたします。

(1)安全が定時性よりも優先すべきであり、安全を前提としたサービス向上に努めるべきであることを、グループ全体に徹底させていきます。

(2)すべての社員が、いかなる状況においても安全意識に則って自律的に行動できるようにするための取り組み        を推進します。

(3)現場と経営との一体感を強化すべく、経営自らが現場に積極的に出向き、双方向のコミュニケーションに努め、風通しの良い職場風土の醸成に努力していきます。

今般の対策は、このような背景を認識し反省した上で、経営が先頭に立ち全社一丸となって取り組むべき事項を取りまとめたものであり、直ちに実行に移すとともに、その浸透について検証しつつ継続して取り組み、今後の安全体制の構築、推進にあたってまいります。

2.全社一丸となった安全意識改善への取り組み

(1)緊急安全意識向上運動の設定

 安全運航はJALグループの存立基盤であり社会的責務であることの再認識および再徹底を図るため、本年4、5月の2ヶ月間を「緊急安全意識向上運動」期間と定め、全社一丸となって安全意識の改善へ向けて以下の取り組みを行います。

(2)緊急安全ミーティングの開催

 社長はじめ全役員が現場に赴き緊急安全ミーティングを開催し、安全啓発を行うとともに、社員と直に話を交えることにより、経営と現場間の双方向のコミュニケーションを推進します。このため、4、5月の間に、本社および運航本部、整備本部、客室本部、空港セグメント、貨物セグメントおよび国内外全支店、基地、グループ会社において、延べ100回以上のミーティングを開催します。

(3)継続的な安全ミ-ティングの開催

 経営トップと現場の安全ミーティングは運動期間後も、年次計画に基づき継続的に開催していきます。これにより、経営トップが常に現場の声を吸い上げる体制を構築します。

(4)社員に対する安全意識の再徹底と法令、規程類の再教育

 安全に係わる情報の迅速かつ適切な処理のためには、管理職層の安全問題に対する危機感、および情報処理の重要性への再認識が不可欠であります。このため、管理職クラスの安全意識の啓発に重点をおき以下の安全啓発、教育を実施します。

・全管理職を対象とした安全啓発のための会議を4、5月の間に全本部、セグメントにおいて集中的に開催します。
・生産部門社員(運航乗務員、整備士、客室乗務員、地上運航従事者および空港における安全に関わる業務に従事する者)に対し、今回のケースを踏まえ、業務の具体的な安全上の意義および法令、規程類の重要事項に関し、その設定の背景も含め再教育を実施します。(4、5月)

・全社員に対し、安全意識の再徹底を図るとともに、法令、規程類の遵守について重ねて周知徹底します。(4月より)

(5)一斉安全点検の実施

3月28日~4月15日の期間、運航、整備、客室、空港、貨物の各部門において一斉安全総点検を実施し、規程が守られているか、手順が規定通り行われているかを点検します。

3.ヒューマン・エラーの防止等のための手順、マニュアルの見直しおよび遵守の徹底

(1)安全に係わる手順、マニュアルの見直し

 4月から12月末までの間を「手順、マニュアルの改善運動期間」と定め、運航、整備をはじめ安全に係るすべての部門の手順、マニュアルを見直します。見直しにあたっては、安全ミーティング等により集められた現場の声や、他社の手順、マニュアルも調査し、優れたところを積極的に取り入れることにより、現場で働く人にとって真に分り易く、使い易いものとなるようにします。

(2)一連の安全上のトラブルに対応した緊急の手順、マニュアルの見直しおよび遵守の徹

 事業改善命令に至ったトラブル、およびその後発生した一連の安全上のトラブルの重大性にかんがみ、以下の通り緊急に手順、マニュアルの見直し等を行っております。

・管制指示の機長、副操縦士間の相互確認手順、および管制指示に疑問を持った時の確認の手順を明確化しました。(千歳ケース、仁川ケース対応3月18日改定済)

・離陸開始直前に運航乗務員にワークロードが集中することを避けるため、離陸前準備手順のうち滑走路進入前までに完了しておくべき業務を明示しました。(千歳ケース対応3月18日社内通達済)

・客室乗務員によるドア操作を確実に履行するため、各ドアの担当者以外の代行者によるドアモード変更操作の実施は認めず、操作後に指差し、声を出して再確認するとともに、ブロックアウト前にドアモード変更を機長に報告することとしました。(ドアモードの変更忘れケース対応3 月28日改定済)

・着陸時の引き起こし時の操作および機長が副操縦士に操縦を行わせる場合の注意事項を明確にしました。(テールスキッド接地ケース対応、3月30日社内通達済)

・誤った部品が使用されることを防止するため、適切な部品の使用を常にモニターできる新たなコンピューターシステムを平成 17年度中に導入します。それまでの間、正しい部品が使用されていることを二重に確認することとしました。(ボーイング747型貨物機主脚部品等誤使用ケース対応、4月7日改定済)

・イレギュラー運航および落下物への対応を強化するため、原因、改修の要否、検査間隔の短縮、定期交換の必要性等の対策を積極的に検討し、立案した対策を迅速かつ確実に実施するための手順を定めました。(最近の一連のイレギュラー運航及び落下物ケース対応、4月13日制定済)

 また、これら手順、マニュアルの変更等について、その遵守を徹底するため、運航乗務員に対して、手順の周知徹底を行ったほか、運航乗務員全員を対象とするグループ教育を4月末までに行います。また、指導層機長により運航乗務員全員を対象とした管制交信の実施状況の点検を9 月末までに行います。

 客室乗務員に対しては、上記手順の周知徹底を行うとともに、先任客室乗務員全員とそのクルーを対象とし、実運航において、ドア操作手順の適切な実施状況の点検を6月末までに行います。

 各基地、各工場の整備士に対しては、上記手順の周知徹底を行うとともに、グループ責任者クラスの管理職による作業手順の適切な実施状況の点検をコンピューターシステム導入まで継続して行います。

4.安全情報の的確な伝達と処理のために ― 安全組織体制の見直し(1)社長直属の「安全補佐」の新設

 経営のトップが安全情報を迅速かつ的確に把握し、経営として適切な判断が下せるように、社長直属の「安全補佐」(現場業務および安全に係わる法令、規定に精通した部長級の者3名で構成)を本年4月1日付けで新設しました。 「安全補佐」は、JALグループ全体の日常運航に係わる安全情報、業務遂行上の安全に係わる諸情報をオペレーション・コントロールセンター、および各本部の安全担当部等から入手し、これを適宜社長に報告するとともに必要な助言を行います。

(2)「安全対策本部会」の新設

 社長、副社長、安全担当役員および運航、整備、客室、空港、貨物の各担当役員をメンバーとする「安全対策本部会」を本年3月17日付けで新設しました。この本部会は定例的な開催に加え、緊急案件が発生した都度、開催することにより、日常運航上の安全に係わる重要な諸情報の共有化を図るとともに、機動的に対応策を決定します。また、全社的な安全に係わる重要施策について検討し、方針の決定を行います。

以上

しかし、当時で2兆円の有利子負債をも保有しており、まずは、「人員削減」へと走りました。その結果、大きな人身事故などはないものの相変わらず、トラブルはあり、「客室内の保安任務を主としたサービスの劣化」などは、利用者からもそっぽをむかれることとなり、「JAL離れ」をいっそう加速させました。以下は、2007年の削減です。このときに、多くの物言う社員も愛想を尽かしたとも言われています。

現在もグループ全体で1万5千名カットから2万名へと削減目標を大きくしました。「安全運航は保つ」といいながら、実際は運航現場から人員を間引くことをしています。

「安心と信頼のブランド」が低下すれば、「再生・再起」どころではなくなってしまいます。「JAL再生」を心から願うもののひとりとして、こうした事態に憂うものです。

2007年の「JAL、早期退職を前倒し 次課長級は630人応募客室乗務員でも実施」

2007年 10月13日8時33分配信 フジサンケイ ビジネスアイ

 経営再建中の日本航空(JAL)は12日、一般職社員を含めた客室乗務員を対象とした特別早期退職者の募集を11月から始めると発表した。再生計画で挙げた人件費抑制政策の一環で、2008年度からの実施を前倒し、経営再建を加速させる。また、同社は9月から募集していた次課長級社員を対象にした特別早期退職者の募集に、当初見込んでいた450人を大幅に上回る約630人が応募したことも明らかにした。 すでに実施済みの部長級約250人を含め、特別早期退職への応募者はこれまでに計880人に達した。再生計画では07年度に地上職700人の削減をあげていた。 これによる年間の人件費削減効果は約90億円と見込んでおり、さらなる人員削減で固定コストの圧縮を急ぐ。割増退職金などの特別損失は未定だが、07年9月中間決算に計上する方針だ。
 客室乗務員については当初、08年度から10年度の3年間に各年度200人、計600
人を削減する予定だったが、「スピード感を持たせる」(同社)ため、1年前倒しで実施することにした。
 対象となるのは、関連会社などへの転籍者を含めた客室乗務職社員のうち、管理職は来年
3月31日時点で満54歳以上、一般職社員については満50歳以上で、かつ勤続15年以上の社員約900人。募集期間は11月12日から12月21日まで。

One thought on “「格安礼賛」と「安全軽視」は、裏と表の関係なのに・・・。スカイマーク問題

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です