~「民間航空機へのテロ」警戒必要~
ブッシュ大統領も、ブレア首相も、両国内で、イラク開戦の決定的大義とした「大量破壊兵器」WMD開発に関する情報に、「不正確さあり」あるいは「情報操作の疑いさえある」と厳しい追及を受けている。またイラク国内治安安定の道は、その目途さえ立たず、長期化を余儀なくされている。このため、米英両国内では、両首脳並びに政府が、この点でも苦しい立場を余儀なくされている。
戦争の長期化は、兵士達の死傷増大のみならず、戦費増大から国内の経済にも深刻な影響を与えていくため、この点が国内世論の厳しい反発の的ともなっている。
こうした事情を打開するための、両国首脳の会談がセットされた訳だが、苦しい事情を共に抱えた首脳間の連帯の強調、はアピールされたもののイラク国内問題の解決はデッドロックに乗り上げており、「米国の意を受けたイラク代表会議は意味がない」などとしたみつからぬ「サダーム・フセイン声明」まで出されるに至っている。散発的とはいえ、米軍への攻撃には「アルカイダ」が関与しているとの報道もあり、世界に「テロ」の不安を与え始めている。
自衛隊派遣での援助については、果たして「イラク国民から本当に感謝される救援者として受け入れられるのか」それとも「米英の片棒を担ぐ日本と憎しみを買うのか」微妙な立場となっているといえます。
日本の民間航空機の安全運航は、日本政府の政治・外交のありかたにその全てをゆだねざるを得ないわけですから、誠に心もとないものを感じます。
航空関係者は、こうした事態を注視し、必要な警告・提言を逐次行っていくことがますます重要になってきていると考えます。
【資料①】
☆イラク戦争の正当性を強調 米英両首脳が会談
朝日新聞ニュース速報 [2003-07-18]
ブレア英首相は17日、米国を訪問し、ブッシュ大統領とイラク復興やテロ対策、中東問題などについて会談した。イラク戦争の大義とされた大量破壊兵器(WMD)開発の脅威をめぐる情報について、ブレア氏は共同記者会見で「真正な情報と信じている」と主張。ブッシュ氏も「説得力のある論拠を持っていた」と述べ、イラク戦争の正当性を強調した。
旧フセイン政権によるニジェールからのウラン購入計画に関する英情報機関の情報について信憑(しんぴょう)性が揺らいでいるが、ブレア氏は情報の正しさを訴えた。記者会見の前に行った米議会での演説では、「非人道的な虐殺と苦難を引き起こした(旧フセイン政権の)脅威を打ち崩した以上、歴史は許してくれると確信している」と述べた。
ブッシュ氏はイラクのWMD疑惑について「生物・化学兵器を製造、保有し、核開発計画を再構築しようとしていた」と述べ、フセイン元大統領が核開発再開を目指していたとの見方を強調。問題の情報には触れなかった。その上で、「フセイン政権は増大しつつある脅威だった」と述べ、武力行使の正当性を強調した。
イラク情勢についてブッシュ氏は「米英とその他の軍は、崩壊した政権や過激派らの残党との戦いに直面している」と述べたうえで、「米英軍は殺人者らを捜し出し、法の裁きを受けさせる」と述べた。ブレア氏は「国際社会全体がイラクの脅威を認めた安保理決議1441を忘れるべきではない」と述べ、国連と協調する必要性に言及した。 米国は、各国にイラクへの平和維持部隊派遣を求めるための新たな国連安保理決議を求める方針を示しており、国連との協力を求める英側に歩み寄る姿勢を見せている。 中東和平問題では、ブッシュ氏が「自由なイラクを達成すれば、中東全域の模範となる」と述べ、イラクの民主化を機にパレスチナを含む中東全域に民主化を進める方針を強調。ブレア氏も和平に向けて米国と協力する姿勢を明確にした。 また、テロ容疑で米側に拘束され、キューバのグアンタナモ基地に収容されている英国籍の容疑者2人の取り扱いでは、身柄を引き渡して英国の司法で裁くことを認めるかどうかについて、会見後の首脳会談で議題として取り上げることを確認した。
【資料②】
☆市民や我々にも攻撃、治安最悪
NGO責任者の大西氏 イラクで活動
イラクに5カ所の拠点を持ち、医療や物資の支援活動にあたっているNGO(非政府組織)「ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)」の統括責任者で96年以来、現地で活動を重ねてきた大西健丞(けんすけ)さん(36)が一時帰国中の17日、朝日新聞の取材に応え、イラクの現状を語った。
現地の治安は「バグダッド市内は回復しつつあるが、市外は悪化している。どこも戦闘地域といっていい」と指摘。軍への攻撃や金目当ての襲撃に加えて、米英軍の信頼性を低下させるためのNGOや市民への攻撃も増えているという。
PWJのスタッフも5月15日に銃撃に遭った。NGOとわかるように白く塗り、旗を立てた車でバグダッドから北へ180キロほどの高速道路を走っていた時のことだ。「横の窓はすべて落ち、車はギャング映画で見る蜂の巣のような状態になった。幸いけが人は出なかったが、全員死んでもおかしくなかった」という。
現場は、自衛隊が米軍から派遣先として打診されているバラドからわずか20キロほど。あたり一帯の治安状況は「最悪」という。
大西さんはNGOや国連などの人道援助機関が軍隊と混同されることを心配する。ボスニアやソマリアではNGOが軍隊と間違われて襲撃され、多数の死者が出た。
「自衛隊の活動によっては、本来の援助活動がマヒする恐れもある。軍隊と混同されるのを防ぐため、非常に細かい行動規範を作っている」
【資料③】
大西健丞氏インタビュー詳細
☆武器が「家電」感覚/リアリティーない国会審議
イラクで救援活動をするNGO(非政府組織)、ピースウィンズ・ジャパンの統括責任者、大西健丞さんのインタビューの詳細は次の通り。
●民間の死者多数
米英軍がバグダッド市内に集中していることもあり、治安は元の状態が10だとすると、4か5くらいまで戻った。
しかし市外はフセイン残党が地下でネットワーク化され、巧妙になっており悪化している。報道されない民間の死者も多い。一般市民も身を守るため武器を携帯している。戦争中に最後の配給として配られたし、闇市場でも出回っている。自動小銃は300万丁以上あり、携帯式ロケットランチャーや機関銃も多くの人が持つ。武器は市民にとって、家電感覚だ。
●変質した戦争
通常の戦争論でいえば、戦争の主体は国家だ。現在イラクでは相手の政府は消滅しているので戦争はありえない。だから戦闘地域がないと法的、政治的用語で押し切ることも可能だ。しかし、フセイン政権の消滅後、散発的に襲撃を起こしているのは国家ではない。またこれまでは、国家が国家以外の存在に戦争を挑むことはなかったのに、9・11以降、国家がテロ組織に戦争を挑む時代になった。戦争は本質的に変化した。そういう戦いでは、どこが戦闘地域になるかわからないのだ。
●迷彩服では無理
中東では、日本は中立的で侵略的意図を持っていない、と考えられているので、自衛隊が現地で標的にされるかどうかはわからない。
しかし、非戦闘部隊であると明確にわからせる必要がある。自衛隊の車両を白く塗ったり、駐屯地を塀で囲って外から見えないようにして露出をさけるなど配慮すべきだ。また、通常、迷彩服での人道援助はありえない。現地での広報活動も重要だ。
だがそもそも、今回は自衛隊を派遣する局面なのだろうか。紛争予防やPKOなど、自衛隊派遣が有効な場合はほかにいくらでもある。
●現状とギャップ
自衛隊はイラクで給水活動をするという。現地の人からすれば、くれるものはもちろんほしい。だが、自衛隊が仮に100億円かかるところを、NGOが5億円でできるとすれば、納税者の視点から見れば(派遣は)正しいのか。その議論が欠けている。日米同盟のための派遣であり、その対価なら100億円は安いのかもしれないが、そこをきちんと説明すべきだ。
また、対象地域の紛争の現状について、国会で吟味することなく派遣するのも問題がある。米軍への攻撃が続く現状では、米国がいつ足を抜け出せるのかの見通しもない。そうした問題を詰めずに、「派遣先が戦闘地域か非戦闘地域か」ということを議論する国会審議はリアリティーがない。
【資料④】
☆自衛隊派遣、日米ズレ 米、イラク危険地域打診
朝日:《時時刻刻》より 2003.7月17日
イラクへの自衛隊派遣をめぐり、日本政府の見通しの甘さが露呈している。「戦闘地域、危険な地域には派遣しない」と政府は繰り返してきたが、米側から打診されたのは米軍への襲撃が頻発する地域への派遣だった。米中央軍司令官は16日、イラクの現状を「これは戦争だ」と認めた。自衛隊の安全が確保でき、米側も満足する派遣という「連立方程式」を満たす答えはあるのか。
●攻撃が頻発
16日、バグダッド郊外の旧サダム国際空港(バグダッド空港)で米軍のC130輸送機に向けて地対空ミサイルが発射された。命中はしなかったが、防衛庁に与えた衝撃は大きかった。
「イラクに本当に安全な地域はあるのか。米軍が守ってくれると言ったって、自衛隊があんな攻撃を受けたら当分は活動できなくなる」(関係者)
安全とされたバグダッド空港で、航空自衛隊が派遣を予定する同型の輸送機への攻撃。しかも空自のC130輸送機のすべてにミサイル回避装置がついているわけではない。
バグダッド空港は「イラク南部が安全」と派遣先に想定していた防衛庁が、南部バスラ近くで英兵6人が殺された事件を受けて、にわかに米軍などへの給水・浄水活動を行う派遣先に挙げた場所だった。今回のミサイル発射で、防衛庁では「やはり安全なのは南部」との声が出るなど、混迷を深めている。
もう一つ、日本にとってショックだったのは、米側が自衛隊の派遣を打診してきた候補地が、北部バラド近郊だったことだ。そこでは米軍が掃討作戦を重点的に展開し、米軍への攻撃が頻発している。
今回の打診は、米側が日本に「安全な場所での支援」を約束しているわけではないことを鮮明にした。福田官房長官は「自衛隊が行けるかどうか今の状況では難しい」と認めざるを得なかった。
●思惑外れる
「バグダッド空港周辺での給水は間に合っている」。米側の答えは素っ気なかった。日本側が「空港なら米軍の警備が手厚く、安全についての心配が少ない」と判断し、支援策としてひねり出したのが、同空港周辺での浄水・給水活動だったが、思惑通りには運ばなかった。
米側のニーズは米軍が現に厳しい任務に就いている場所での後方支援。その要求に応えるためには、自衛隊は「危険」な地域に行く必要が出てくる――。日本政府はジレンマに陥っている。
政府内からは「死傷者が続く米国内の世論を考えれば、米国の要求に相応に応じる必要がある」(外務省筋)との声もある。だが、これまでの政府の説明との整合性や、死傷者が出た場合の小泉政権への打撃を考慮すると、答えを出すのは簡単ではない。
