「JAL黒字」と沸き立つ中で・・・。

「JALが黒字を出した」ということで、だいぶん話題になっています。本業の営業利益が9倍ということですが、これは、二つのことを示しています。

ひとつは、「航空への需要は、他の産業と比較にならないくらい依然として高い」ということです。あれだけ、事故やトラブルで信用を失墜しても溢れる需要は、JALをも選んでくれていると言っても過言ではありません。これまでの近年の航空の歴史では、需要が極端に落ち込んだのは「SARS」「9.11」の年だけで、利用者の総数は右肩上がりなのです。本業で上げた大きな利益を、不動産投資や数百社に及ぶ赤字子会社設立、ドルの10年高値先物買い、HSST投資などで3000億円にも及ぶ乱脈経営さえしていなければ、「危機」も存在してはいなかったといえます。誰も責任をとらず、「過去」は過去と、葬るようでは「社会保険庁」と同じ道になってしまいます。本業にだけ精を出していれば、「石油危機」という苦しい環境の中でも、このぐらいの利益をあげるのは、そう難しいことではないと航空を客観的に眺めている方であれば、意見を同じくするのではないでしょうか。

二つ目は、経費を削減した、削減した、とパブリックに言っている特徴は、「路線の統廃合・機材のダウンサイジングなどで燃費・運航の効率化」などもありますが、メディアも大きく取り上げるのは「人件費削減」にあります。年間100億程度と言われています。その100億の中身は?と言えば、飛行機を動かすすべての現場が「疲弊」し、「モチベーションを喪失する」ことを行っています。パイロットは、「疲労が極限を超えるまで操縦する」「外国人導入で単価を削る」整備は、「子会社外注」「中国・シンガポールなどの外国へ重要な整備も外注」「JALでは整備をしない方向へ」客室乗務員は「訓練不十分な新人をどしどし投入、ベテランは肩たたき」「安全訓練では、管理職乗務員がばたばた試験に落ちる」という有様で、見てはいられない状況ともいえます。

こういう無理のつけは、既にここ数年で「日本のナショナルフラッグキャリアであったJAL」の誇りさえ、大きく傷つけてきました。その上、更にこうした「安全への投資節約、上げ底のサービス」を助長する方向を続けるならば、この「リバウンド」は、必ず大きなトラブルとなって跳ね返ってくるのではないでしょうか。心配になります。

「銀行・世間への形」にとらわれた単年度の「黒字」には、少しも安心できません。どこを突かれても「世界一の安全と快適性」を誇るかつての日本航空の姿を真に取り戻してもらいたいと願うものです。

例えば、「黒字」のニュースの直後の5月13日、あまり大きくは報じられていませんが、「10キロもあるエアコンのカバーが2枚」ジャンボ機から落下しました。重さ10キロの物体が加速度をついて落下したらどうなるか、大変なことです。「当該部分には、きちんと閉めるためのラッチもついています。整備点検はどうなっていたのでしょうか。」幸運にも、畑に落下し、人身事故が起きなかっただけです。怖い話です。

千葉・香取市の畑にJALウェイズ機の部品が落下 関係者らが近隣住民に謝罪

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http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00132793.html

13日、千葉・香取市の畑でJALウェイズ機の部品が落下しているのが見つかり、JALウェイズの関係者らが14日、近隣の住民らへ謝罪に訪れた。
発見者は「刺さってた。びっくりしましたね。まさかあんな大きな物が落ちてくるとは思ってなかった」と話した。
13日午後、千葉・香取市の畑で、パネル状の物体が発見された。
部品を落としたのは、12日に成田空港を飛び立ったオーストラリア・シドニー行きのJALウェイズ771便。
離陸直後に胴体部分にある外壁パネルが落下したとみられている。
畑で見つかったのは、縦122cm、横147cm、重さおよそ10kgのグラスファイバー製のパネル。
航空評論家の秀島一生氏は「整備点検のあとの始末の問題だと思われる」と話した。
パネルには留め金がついていたが、しっかりと固定されていなかった可能性があるとみられている。
14日、JALウェイズの関係者らパネルが落ちた近隣の住民に謝罪に訪れた。
成田空港の近くは、1日500機以上の航空機が飛んでいる。
JALウェイズの古澤 彰取締役は「皆さんの生活している場所を飛んでいるので、このような事態が二度と起こらないような対策をしていきたい」と話した。

JAL 3年ぶり最終黒字も再建道半ば
                 5月10日10時38分配信 毎日新聞


 経営再建中の日本航空(JAL)が9日発表した08年3月期連結決算は、最終(当期)利益が169億円と3年ぶりの黒字に転じた。好調な国際線や徹底した経費削減が業績を押し上げたが、ライバルの全日本空輸(ANA)には収益力で依然大きく及ばない。世界的な景気後退懸念や原油高騰など経営への逆風が再び強まる気配もあり、再建が軌道に乗ったと楽観できる状況ではなさそうだ。【太田圭介】

 ◇本業好調

 本業のもうけを示す営業利益は前期比約4倍の900億円で02年の旧JAL・旧日本エアシステム(JAS)の統合以来最高。経常利益も約3倍で数字上はANAを上回った。売上高は子会社株売却の影響でやや減ったが、欧州方面など高収益路線でのビジネス需要増や運賃値上げで国際線の旅客収入は前期比4.1%増えた。燃料費も事前の購入予約で原油高騰の影響を極力回避し、前期を81億円下回った。

 国際航空貨物運賃カルテル問題で欧州連合(EU)への罰金支払いに備えた引当金(61億円)を計上したが、それでも最終黒字を確保。金山佳正執行役員は会見で「国際線は予想通り好調。国内線も勢いは弱いがANAと対等に戦えるようになった」と胸を張った。

 ◇財務強化が課題

 財務面も今年3月に実施した約1500億円の増資で一息ついたが、経営の健全性を示す自己資本比率は21.4%でANAの25.4%を下回る。有利子負債も依然1兆6009億円あり、金山執行役員も「財務はANAより見劣りする」と認めている。

 さらに、09年3月期は景気減速と燃料費がかさむ影響で、経常利益は前期比57%減の300億円と大幅減益となる見通し。最終利益は130億円を確保する見通しだが、JALカード株の売却益(420億円)を除けば赤字になる計算だ。

 国土交通省幹部は「08年3月期は経費削減や客単価の向上で乗り切れたが、回復が軌道に乗ったとは言えない」と慎重な見方を示す。みずほ証券の高橋光佳シニアクレジットアナリストも「今回はちょっとできすぎ。今後は燃料価格高騰で国際線の観光需要が減るなどのリスクがある」と予測する。 

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