JAL機、連続管制トラブル!          なにが問題なのでしょうか。

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JALだけの問題ではない、国内線・近距離国際線での「機長昇格訓練」

2月18日の千歳空港、3月4日の小松空港と2度にわたる「管制交信時のトラブル」で、パイロットの昇格訓練がクローズアップされました。国内線やアジアの近距離国際線は、長い間、機長昇格のための最終訓練の場とされてきました。テイクオフ・ランディング回数の多いことが、訓練としては、効率がよいことからだといわれています。「機長席=左側のシート」に座って離着陸時のリードをしたり、航行中も機長としての任務を受け持つ、文字通り訓練フライトです。pilot in command=PICという言葉があります。飛行中、航空機の安全および運航に責任を持つ操縦士を指しますが、一般的に副操縦士と機長の編成であれば、機長。複数の機長がいれば、誰がPICかを決めてフライトをし、責任体制を明確にしています。左側キャプテンシートで訓練していることを通称「レフト」ともいっています。それだけ、当たり前のことになっています。しかし、利用者の身になってよく考えれば、安全上は、通常のフライトと較べれば割引される状態ともいえます。

こうした運用は、「私が現役であった30年間、連綿として続いてきました。コーパイロットですから、時には、ハードランディングなどもありましたが、こうした重大ミスには、遭遇したこともなく、問題視されることもありませんでした。なによりは、国交省航空局が認めているからです。

この問題について、JALは、「自主的に中止し、点検をする」ということです。では、ANAでは?といいますと、ほぼ同様な訓練形態をとっています。

千歳空港での事態は、航空局は「重大インシデント」としながらも訓練のあり方については、言及していません。小松空港のミスの後も、航空局においても、「航空法上は、機長資格をとってからの訓練だから、その運用は、各エアライン内部の規定にまかせる」という姿勢からは、出ておりません。

事を重大視したJALが、いちはやく「総点検」するために、自主的に当面の訓練を中止したことは、近来まれに見る「スピード決断」で、この点は評価できると思います。

しかし、同じ体系で「昇格訓練」を行っているANAには、目だったトラブルがあがっていないことを考えれば、事態はより深刻のようにも映ります。JAL・JAS統合後の問題は、尾をひいてはいないのでしょうか。

また、千歳と小松に共通しているのは、軍民共用の空港だということです。千歳の管制について言えば、自衛隊の管制であり「管制用語、フレーズの使いまわしが、民間空港の管制官と少々でも違っていることはなかったか、パイロットの誤認を誘うようなことはなかったのか」と心配する向きもあります。

航空局として、「管制官の人員配置」の点検や、「管制官とパイロットのコミュニケーションという点で、国内線でも英語の管制でなければならないのか」などの見直しなど、素早いアクションが求められています。海難事故が続くなか、航空で事故が起きた場合をかんがえると、3次元の運航とジェット機のスピードと大量輸送ということに目をやれば、背中が寒くなるものを覚えます。事故調査なども、アメリカのNTSBのように、運輸関係の役所から独立した組織として改編すべき時期にきています。道路問題でも、溢れるような天下り組織のある中、航空専門の組織もなく、いまだに「鉄道・航空事故調査委員会」な訳ですからここも寒いものがあります。

いずれにしても、従前どおり「パイロットの昇格訓練の場を営業路線で行うのか」あるいは「アメリカなどの訓練基地でおこなうのか」など抜本的な議論が必要となってきました。エアラインにとっては、「安全とコスト」という命題の前に立たされ、難しい問題になります。

いずれにしても、パイロット・整備・客室乗務員など運航に直接からむ現場からは批判が強い、安全にからむ「規制緩和」をするだけして来たわけですから、この辺で、国としての納得できる見直しをしていただきたいものです。

エアラインとしても。利用者からは見えない「安全」より、「格安運賃」に走ることを美徳とするような趨勢に負けず、「安全を金看板」とする勇気を持っていただきたいと願うものです。

<営業路線での訓練、日航が当面中止…トラブル相次ぎ
               3月5日11時54分配信 読売新聞
 日本航空は5日、営業路線を使っての運航乗務員の訓練飛行を当面中止することを明らかにした。先月の北海道・新千歳空港での無断離陸滑走や4日の石川・小松空港での滑走路誤進入など訓練中のトラブルが相次いだことを受けた措置。 日航によると、新千歳のケースでは、副操縦士の訓練中だった副操縦士候補生が管制との無線応答を担当中、「ただちに離陸できるよう準備せよ」という言葉を「ただちに離陸せよ」と聞き違え、指示を復唱しなかった。この日航機はその直後、着陸機が走行中の滑走路で離陸滑走を始めた。 小松のケースでは、機長訓練のため操縦を担当していた副操縦士が停止線の位置を見落とし、航空自衛隊小松基地の戦闘機F15計3機が降下中だった滑走路内に誤って進入した。 日航は「訓練自体は国に承認を受けた自社規程に基づいて行われているが、いったん問題点を洗い出して再発防止策を探りたい」としている。 日航はまた、すべての運航乗務員に対し、夜間などで停止線が見えにくい場合は早めに停止するなどの対応をとるよう注意喚起した。 
  

日航機 空自誘導路に誤進入 F15着陸やり直す 小松空港
                       3月5日8時0分配信 産経新聞

 4日午後7時半ごろ、石川県小松市の小松空港で離陸しようとしていた日本航空1280便(ボーイング777、羽田行き)が滑走路を横切り、航空自衛隊小松基地用の誘導路に進入するトラブルがあった。このため、着陸しようとしていた空自F15戦闘機が着陸をやり直した。乗客179人と乗員10人にけがはなかった。日航機は離陸をやり直し、約45分遅れて出発した。空自によると、F15戦闘機は、目視で滑走路まで約2キロに迫っており、着陸まで20-30秒ほどしかなかったという。 国土交通省によると、日航機の機長は「滑走路手前の停止線が暗くてよく見えなかった」と話している。日航は先月16日にも、新千歳空港で、旅客機が管制官の離陸許可を受けずに滑走を始めるトラブルを起こしたばかりだった。 航空幕僚監部によると、日航機は民間機用誘導路で、空自が管轄している管制塔に離陸許可を要請。管制塔からは「ホールド・ショート・オブ・ランウェイ(滑走路の手前で待て)」との指示があり、同機のパイロットも指示を復唱したが、同機は滑走路を越えてしまった。 このため、管制官は、日航機に空自用誘導路を通って民間機用誘導路に戻り、離陸をやり直すよう指示。着陸しようとしていたF15戦闘機には、着陸やり直しを命じた。

<新千歳トラブル>重大事態もJAL、空自管制隊は報告遅れ
                           2月18日15時1分配信 毎日新聞

 新千歳空港で日本航空(JAL)502便(乗員乗客446人)が前方に着陸機がいたのに管制の許可なく離陸滑走したトラブルで、JALと管制業務を担当する航空自衛隊千歳基地管制隊が国土交通省新千歳空港事務所へ報告したのは発生から2時間以上経過した16日午後1時前だったことが分かった。JALは発生後も同じ機体で離陸をやり直す準備をしており、管制も含めた当事者に重大事態という認識が欠落していたことをうかがわせている。 国土交通省は今回のトラブルを事故に結びつく恐れのあった「重大インシデント」と認定している。 トラブルの発生は16日午前10時半ごろ。JALによると、管制官の指示で離陸を中止した502便は滑走路から誘導路を通って駐機場へ戻った。天候が回復すれば同便を運航する予定で、乗客を機内で待機させた。 しかし天候回復の見込みが立たなかったため、午後0時50分ごろ、乗客を降ろすことを決定。ほぼ同時刻に新千歳空港事務所へ報告した。 報告が2時間後になったことについて、JALは「管制と機長が事実関係を整理するのに時間がかかった」(広報部)と説明。同基地は「確認作業などで時間を要した」(広報室)と話している。 国土交通省航空局運航課によると「重大インシデント」の場合、乗員から聞き取りをしたり、ボイスレコーダーを確保する必要があるため、トラブルを起こした機体と乗員は空港を離れないことが原則になっている。今回の場合、同便が目的地の羽田へ出発していれば、聞き取りがすぐにできない可能性もあった。

 航空法によると、重大インシデントの発生時は当該機の機長に国土交通相への報告義務がある。同課は「事実関係の確認に時間を要したのだと思う。報告が遅れたとは思わない」と話し、問題にはしない姿勢だ。

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