総務省行政評価局では、航空保安上の問題として国交省に対して、下記の報道のような勧告を行っています。
大きなニュースとして報道されてはいませんが、民間航空に接する者としては、「大変な問題」として受け止めています。
ニュースでは、多くの問題指摘のなかのひとつである「ハイジャックに対する訓練が全国55空港で実施されていなかった。」ことが注目を引く問題として取り上げられています。しかし、
1.重要と思われる勧告がまだ他にもあること。
2.この問題ひとつとっても、少なくとも、機長を殺害され、あわや墜落の 危機まであった「全日空ハイジャック事件」 の後に至っても、決めら れた訓練さえ行っていない実態を明らかにしている
3.少なくとも国交省の指示・通達を遵守しなくとも、それで通用してゆく 世界があるということ、実施については、公団、航空会社などの姿勢に かかってきていること。
4.保安体制強化にかかる経費は、主にどこが負担するのか、実施側の負担 が大きいことがネックになってはいないか。
など問題は簡単に解決できるとは思えない要素も含んでいます。
いずれにしても、日本の世情・世論全体が、「危機管理」に対して実情を把握していない、不十分さを認識していない、ことに強い憂いを感じます。民間航空利用者を危険にさらさないという点で、世界に向けても恥ずかしい実状ではないでしょうか。
セキュリティー上、早急に改善されるべき問題は、私が知る範囲でも、地方空港だけでなく、日本の玄関口である成田・関空においていくつも山積されていると認識しております。
おりしも、イラク情勢がらみで世界中がテロ・ハイジャックに神経を緊張させています。
ことの是非は置いておくにしても、日本はとにかく国策として自衛隊のイラク派兵をはじめている訳ですから、少なくともアメリカ・ヨーロッパ並みの防衛対策を講じることが急務です。
このことについては、先日、国家として「緊急テロ対策本部」が設置され、内閣官房下、つまり総理直結の機関が既に始動しています。
私は、こうした関係省庁に直接「航空関係者/現場から見たテロ・ハイジャック対策の問題点」を提起し、話し合いも行っておりますが、その中で感じたことは、さすがに警察庁は、問題点をしっかり把握していること、また国交省もそれなりの方針をだしていることのですが、いざ実施に当たっては、「国家・自治体・空港・航空各社」がひとつとなって、航空保安体制を強化することには、いまだ大きな道のりを感じます。
この年末年始を海外で過ごされた方々は、世界がどのくらい緊張状態にあるかを肌で感じられたことと思います。
総務省の勧告をひとつの契機として、民間航空の利用者に火の粉がかかることを最大限防ぐため、私のような航空関係者だけでなく、メディアの方々の力が今こそ必要になってきているのでは、ないでしょうか。
【参考資料】
ハイジャック訓練、55空港で未実施 年1回義務化へ
朝日.01.01.04
民間航空機が発着する全国93空港のうち、55空港でこの約4年間、ハイジャックに対する訓練が一度も実施されていないことが総務省行政評価局の調べで分かった。大半は地方自治体が管理する空港で、訓練を実施しなかった理由として、一部の空港管理者は「やり方が分からない」「警察や消防との調整が難しい」などを挙げたという。事態を重視した国土交通省は、最低年1回の定期的な訓練を義務づけることを決めた。近く通達する。55空港には早急な訓練実施とともに、訓練計画の提出を求める。
総務省によると、行政評価・監視で、ヘリポートなどを除く全国93の空港について、全日本空輸の機長がハイジャック犯に殺害された事件が起きた99年度から02年度までのハイジャック訓練の有無を調べた。その結果、55空港が約4年間、未実施だった。どの空港が訓練をしていなかったかは、保安上の理由から非公表としているが、国や空港公団、米軍が管理する29空港では4空港が、地方自治体が管理する64空港では51空港が、未実施だったとしている。
総務省が一部の空港管理者に未実施の理由をたずねたところ、6空港が「実施方法が分からない」「警察や消防など関係する機関との調整が難しい」と回答した。
国交省によると、ハイジャック訓練については、定期的に実施中の安全監察や査察で、訓練を実施するよう指導はしてきたが、通達などで義務化はしていない。指導を繰り返す例もあったが、その後、訓練が実施されたかどうかは調べていなかったという。
総務省の指摘を受け、国交省は新たにハイジャック訓練の実施基準を定め、各空港管理者に通知することを決めた。最低年1回の実施に加え、職員が入れ替わる定期異動の後にも実施を求める考えだ。実施にあたっては、ハイジャックの発生から解決までのシナリオを作り、警察や消防などに参加してもらうよう要請し、事前に実施計画書を提出してもらう方針だ。
国交省航空局は「地方空港では人手不足などで長時間の訓練は難しかったかもしれない。しかし、今後は実施に必要な情報を積極的に提示し、実施を促したい」としている。 (12/31 03:05)
