2007年に「警告していた」再録

「空港整備特別会計」のどんぶり勘定で生まれた、98もの地方空港、アジアに置いてきぼりにされた基幹空港、そしてハブ的な機能を高めるための基幹空港づくりというコンセプトのなさ、などがようやく指摘されるに至りました。

10月12日放映の「報道ステーション」では、日本航空が「国交省」「財務省」「経産省」「自民党運輸族」に長年の間、食い物にされてきた模様を詳細に追跡していました。

私だけでなく、こころある航空関係者は、ずっと前から指摘・警告を続けてきました。

以下は2007年1月に記した私のブログです。メディアもなかなか取り上げない、「憂い」がありました。

~利用者よりも金融機関に顔を向ける?~

Sony_dvd_recorder_volume39 1月29日、JALが国内11路線の廃止を発表しました。

報道各社は、1月25日に先行して発表された「ANA」の路線減便・休止発表に加えての報道を行っています。

立て続けのトラブルなどを引き金として、利用者離れを起こしたJALの場合とANAのそれとは若干性質を異にするものなのですが、報道の多くは、「両社とも、09年の羽田空港の発着枠拡大による競争激化に備えてのこと」と共通括弧でくくっている傾向が多いようです。

~路線廃止で地方の「足」は大丈夫か~

Ana_1 これは、JRなどの「赤字ローカル路線」廃止とも共通する問題でもありますが、本来、報道としては、路線の減便・廃止などで「利用者はどういう打撃を受けるか」「空も鉄道やバス並みの公共の交通機関である以上、民間エアラインの経営状況の都合だけで決められていってよいものか、国としてはどうあるべきか」など「利用者の側面に立った」配慮も必要なのではないでしょうか。

現実に、廃止される路線に関連する地元自治体では、知事らが相次いで上京して、JAL側に路線の存続を要請するなど、反発が強まっています。また、ANAでは、こうした声に対し、当面計画を見送ることにした路線もあります。【資料1】

 

【資料1】

ANA、4路線廃止を当面見送り 地元の反対で
              1月25日 毎日新聞

 全日本空輸(ANA)は25日、07年度の国内線の再編方針を発表した。廃止方針を固めていた7路線のうち地元の強い反対を受け中部―福島の廃止を当面見送り、廃止は6路線になった。また、7路線とは別に地元に廃止を打診していた3路線も、地元の強い反発に配慮し当面は存続させることにした。

ANA、効率化で07年度に国内14路線で休止・減便
              1月25日   ロイター

 1月25日、全日空は、国内14路線で休止や減便をする2007年度の航空輸送事業計画を発表した。09年に予定されている羽田空港の発着枠拡大による競争激化に備え、不採算路線を見直して効率化を図る。
 国内線では、神戸―沖縄など8路線で増便するが、関西―宮崎など6路線を休止し、伊丹―新千歳など8路線で減便する。このほか、中部―福島など4路線では運行期間を短縮したり、今後の実績に応じて休止の検討も進める。
 一方、国際線では、9月に成田―ムンバイ路線を開設するほか、5月に成田―広州路線の便数を週14往復に倍増する。

~人件費カットを煽れば・・どういうことが起きるか~

~JALの場合~

この発表に関連して、例えば、1月30日付朝日新聞朝刊では「JALの再建策」にも触れています。 【資料2】このなかで大変気になるのは、

”金融機関やアナリストには「踏み込み不足」との厳しい評価が目立つ。本業の航空事業で営業赤字が続くJALは固定費の抜本的な削減が不可欠で、今後、リストラの上積みを迫られる可能性もある” あるいは、”とりわけ金融機関や株式市場では、高コストが指摘される人件費にどう踏み込むかに注目が集まっていた。” と更なる「リストラ」や「賃金カット」を煽るような報道がされていることです。

もともと、JALの場合は、これまでの歴代経営トップの判断の誤りから過去少なくとも2千億円以上の損失を出しており、順風満帆だった経営をおかしくしました。9.11やSARSなどで収入悪化などがあっても財務基盤としては、こうした巨大な損失がなかったとしたら現在のような苦境にたたされていることもないといえます。

その上、重大なことは「この実態を明らかにし、責任を取るものが誰一人いなかったこと」です。現場は雨の日も風の日も「安全と快適」のために力を尽くしているわけですから、こんなことが延々と続けば、「やる気」を出せといってもせいぜい風見鶏のように上にへつらうしかなかったでしょう。昨年起きた「社長交代劇」にしても「メディア」では「内紛問題」などと矮小化してしまっていますが、社内の感じ方とはおよそ異質なものでしょう。まして現場の声を上げても耳を傾けず、ブラックホールに落ち込めば、およそ現場の手の届かないところで大切な売り上げを湯水のようにどぶに流されて、結果として、後始末は「従業員の賃金カット」、では誰も納得していないのが実態ではないでしょうか。こんなヒストリーにはまったく触れることもなく、「お家の大事だから我慢して当たり前」という一般的論理はなかなか通用するものではありません。危機を乗り切るための「社内一丸となって」という自発性など果たしてでてくるでしょうか。こうした点は、メディアが鋭く追求する必要があるのではないでしょうか。

そして、安全問題でいえば、整備の外注化、パイロットの外人雇用化、CAの契約社員化、サービスで言えばカウンター含め利用者と接しているところはすべて子会社化か契約社員化して、チケット購入にはじまり、「搭乗から降機」までの流れを把握している者さえ年々少なくなり、品質の劣化は目を覆うばかりです。

さて、こうした中で「更なる固定費削減!固定費削減!」と煽れば、いったい「JALの品格と品質」はどうなるのでしょうか。取り戻すことができるのか、更に劣化する危険性があるのか、答えは明快なのではないでしょうか。

~社長の立場~

2006030204296741jijpbus_allview001 こうしたヒストリーと現状をかかえて就任した西松社長は、大変な重荷を背負っていると推察できます。私の印象では、「どこまで本気なのか」「改革の勇気と決断はどこまであるのか」という点で見えないところがありました。スポット的にですが、本社部門、運航部門など社内の雰囲気をうかがったところ、要約しますと「この社長は、今までと違う」「少し前にきているのではないか」「西松社長で駄目ならもうJALは終わりだ」と大きな期待がかけられているようです。

社内の人心を掌握する、経営の責任を明らかにする、という点で、金融・株主・メディアからの批判を浴びることは、覚悟の上で、「更なる賃金カットはしない」と断言したことは、社外では小さなことでも社内ではそれなりの信頼を勝ち取っているのではないかと思われます。また、トラブルの多かった旧JAS所有機であるMD機材を予定より前倒しで退役させるなども利用者にとっては、歓迎される方針です。

一方で、「安全を揺るがす」構造的要因である重要な部分については、「自前主義を排す」といわれていますから、「安全運航をウォッチする立場」の私としましては、目が離せないところでもあります。

~経営と安全は別ではない~

「経営、つまり、儲からなくては、安全といっても限度がある」という認識がメディアを含め、薄く広く存在しているような気がいたします。最近の事例では、「不二家」問題には、こぞって「食品を扱うのに、もうけを優先させるなんて・・。」という意見が定着しています。航空とて、ひとたび「重大な人身事故」を起こせば、昨日まで利益のためなら「安全」問題はさておいて、「コストカットせよ」で傾いていたものが、180度変わって「何をしていたのか」という追及をする側に回ることは、必至です。

「利用者の立場に立った」論理に常に立ち返ることが大事とかみ締めております。

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【資料2】

JAL、緩い再建策 人員対策、自然減頼み

 経営再建中の日本航空(JAL)が29日、国内11路線の廃止を正式に公表した。2月6日に発表する新たな中期経営計画には約3千人の人員削減なども盛り込まれる見通しで、詰めの作業を急いでいる。ただ、金融機関やアナリストには「踏み込み不足」との厳しい評価が目立つ。本業の航空事業で営業赤字が続くJALは固定費の抜本的な削減が不可欠で、今後、リストラの上積みを迫られる可能性もある。   

●基本給カット拡大せず

 JALの新中期経営計画は、(1)生産性の向上(2)不採算路線の再編(3)商品力強化(4)グループ再編が4大柱。とりわけ金融機関や株式市場では、高コストが指摘される人件費にどう踏み込むかに注目が集まっていた。  だが、現時点で固まっている再建計画は、「大規模リストラ」には遠い。07~09年度にグループの約5%の3千人を削減する方針だが、うち2千人強は団塊世代の大量退職に伴う自然減だ。 賃金についても、06年度に2年間の予定で始めた従業員の基本給1割カットの継続にとどまる見通し。労使交渉を意識してか、西松遥社長は17日の定例会見で、基本給のカット幅の拡大について「それは、やらない」と明言した。今後は、ボーナスや退職金の抑制策を盛り込めるか が焦点だ。

 運航トラブルや内紛騒動による客離れがなかなか回復しない国内線にはファーストクラスを導入し、40億円の増収効果を期待する。だが、スタートは12月で、収支に貢献するのは08年以降だ。

●経営、追い風も 燃料価格、融資協議

 JALのリストラが加速しない背景には、企業体質のほか、足元の経営環境に「追い風」が吹いていることもある。 国内路線では4月から平均2・7%の値上げが認められ、200億円の増収が期待できる見通し。さらに、上昇の一途だった燃料価格にも下落の兆しが見え始めた。  主取引銀行の日本政策投資銀行、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行の3行は、JALとリストラ策のすり合わせを続けている。銀行側からは「『ナショナルフラッグ』は突き放せない」(幹部)との声も漏れる。主力行は、まず今年度内に必要な約600億円の融資に応じるか検討。さらに社債の償還などで来年度、必要になる約1800億円についても協議に入る方針だ。  ただ、金融機関のJALを見る目は一様ではない。微妙な立場なのは、通常国会で政府系金融機関の統廃合の法案審議を控える政投銀だ。同行のJALへの融資額は約3千億円。かつて問題となったダイエー、三菱自動車より多い。JALの再建策の中身次第では国会審議での「風当たり」が厳しさを増しかねない。  JALの高コスト体質が続けば、収支の急回復を描く中期経営計画の実現性は後退する。JAL経営陣に「自立」に向けた覚悟が問われている。

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