KLM機タービュランスについて

~なぜ、戻らなかったのか?

~なぜ、緊急着陸を要請しなかったのか?~

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私が、毎日新聞社会部の方からこの一報を受けたのは、移動中の車の中でした。事態の概要を聞いて、まず「疑問」を感じたのは「これだけの負傷者を出しながら、なぜ事件後9時間もあるフライトを続ける決断をしたのか」「モスコーのシェレメチボ空港、サンクトペテルブルグでも着陸できたのではないか」ということでした。

私は、JALのモスクワ線(東京/モスコー/ヨーロッパ)自主運航開始時に、数年この路線を固定した形で乗務をしてきました。天候不良のため、サンクトペテルブルグに緊急着陸したこともありました。この路線を飛んでいるクルーが、「なぜ飛び続けたのか」ということに、一般的な感想よりもより強いものがあります。

~そのとき、CAはどうしていたのか~

2007053100000023maipsociview000 もちろん、負傷者が出るような事態だったわけですから、パイロットもコックピットからでてきて、実状を把握はしたことでしょうが、旅客や客室内のことを「リアル」に捉えているのはCA達並びにCAの責任者だったと思います。引き返しや緊急着陸を強く進言しなかったのかも、大いに疑問でもあります。特にCAの負傷も画像などでは伺われるだけに・・。

~パイロットには、客室内のことはわからない場合も~

ジャンボ機が一番良い例ですが、機首にあるファーストクラスではコーヒーの入ったカップが「かたかた」という程度でも、機の最後尾つまりエコノミークラスでは、上下のゆれだけではなく、ヨーイングといって、魚が尻尾を振るような揺れが、加わります。

「すっ」と体が浮かぶような感覚があったときには、「500メーター」程度はほぼ垂直に降下していると思って間違いありません・

私は、東京/香港間のフライトで強いタービュランスに遭遇しました。はじめはチョッピー(がたがたという程度)でしたが30分ほどでひどい揺れがというか乱上下動でした。航行に雲の中を航行せざるを得ないという、コックピットからの情報もあり、ベルトサインの点灯もされており、CAは3度にわたり「旅客のベルト着用チェック」をしました。そして私は全CAの着席を指示し、コールボタンにも応えないで着席、トイレへの離席許さず、を徹底しました。にもかかわらず、「そのとき」は来ました。3度にわたって、落下と上昇を繰り返したのです。私の横においてあった業務用の「カーゴパウチ」など重いものが、ふわふわと浮き上がり、下に叩きつけられ、これを繰り返しました。通路に身を乗り出して客席を見ると旅客が3人天井に頭を打ちつけ、他の旅客の頭の上に叩きつけられているのです。機内持ち込みの手荷物は通路にぶちまけたようになっていました。

あとでわかったことですが、「ベルトはしていたものの、タイトにしめていなくて、数人で酒を酌み交わしていたため、体がベルトからすっぽり抜けて浮き上がったのでした。CA並びに他の旅客はしっかりとベルトを締めていたため、無事でした。

この際は、香港到着も近かったため、シップサイドに「アンビュランス」待機を要請し、事態を処置しました。

コックピットとしては、客室内映像があるわけではなく、操縦側機内後方の揺れの実態などはリアルにわかるすべもありません。保安上に「いかにCAの判断」が重要かも理解できると思います。少しの揺れで「ベルト着用サイン」が点灯していない時に、「点灯要請」をしたこと、当時は「着用サインが点灯していても、サービス優先の社内ムード」もあり「気をつけながらサービスを」という指示もありましたが、私は「一切危険なことはしない。」で30年間を通してきました。食事か安全かでは、当たり前のことですが安全を優先させて、食事サービス抜きとしたことも何度もありました。現在は、こうした不安全要素も改善されて、「ベルトサイン点灯中はサービスしたり、離席したりしてはならない」というようになってきています。多くのCAと旅客の死亡や怪我の歴史の後の話です。

~最近のタービュランスに関する私のブログ~

2007.01.07  タービュランスで怪我を追放するには・・。

2006.11.21  一日に3回もタービュランス人身事故

2006.08.09  けが人が出たトルコ航空乱気流事故

2006.07.10 絶え間なく「乱気流事故」が・・・。

2006.01.24 タービュランスでCA骨折、ANA機

2 thoughts on “KLM機タービュランスについて
  1. 今回の乱気流は他機からの情報からか予測が出来ていた。ベルト着用のサインもでていた。ただ食事時間中であり、CAにもけが人がでた。離陸2時間ということであり、何故引き返さなかったのかが不明であり、よっぽど航空燃料を無駄にしたくなかったとしかおもえない、それとも軽いタ-ビュランスで報告したかったのか。
    JALならひきかえしたとおもうが。

  2. すでにメールにて私見を述べさせていただきましたが、
    動揺する前にシートベルトサインが点灯していることから晴天乱気流などの不可避な、いわゆる「不測の事故」ではなかったと思われます。そして、引き返す、または代替空港に着陸しなかった意思決定の要素として考えられるのは、軽度の火傷や飲み物を被った乗客の不快感を持ってしても代えがたい「着陸のための燃料投棄のコスト」「乗客の宿泊費・補償等のコスト」「乱気流を避けられなかった機長のプライドまたはプライベートな事情」が大きく関与しているものと想像します。
    もちろん、CAがキャビンの事態をどのように認識したかによって、機長の判断も大きく異なると思いますが、もはやそれを知るすべは日本にはありません。
    個人的な心象としては「KLMには乗らない」のひと言。
    何の説明もなしに去っていってしまうような航空会社は使う気になれません。

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