「止まらない、航空の連続ミス」に国交省も、異例のリアクション

 
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昨日の耐震偽装にかかわる「国会においての証人喚問」は、被害者はじめ多くの国民が固唾を呑む中で行われました。しかし、証人による「証言拒否31回」ということで、国会の権威そのものが「軽視」された事態ともなりました。本日1月18日のメディアでは、一斉に「偽装建築士」の責任でかたずけるのではなく、「政・官・業癒着の構造」」をつまびらかにしないと、解決できないのではないか!という指摘がされております。
さて、人身の大事故には至ってはいないことで、「社会的問題」としての取り上げ方は、やや薄いような気が致しますが、航空の問題は解消されないまま「時間」が経過しているといっても過言ではないような気が致します。
年末12月31日に、大略ですが「連続する航空トラブルに対して、国交省の対応は、甘すぎるのでは・・。?事業改善命令に対するエアラインのトラブル防止改善措置も、結局核心に迫らず、形式的で、お茶を濁す程度になってはいないか・・?。」と下記のような問題提起を致しました。
そして、このことを裏ずけるかのようにその後もトラブルは続きました。さすがにこれでは、監督指導官庁としても
黙過することもならず、異例の「トラブル防止策再提出指示」となりました。

この一方で、JALでは、JAL・JAS統合を控えて、「安全運航」を更に脅かす可能性のある「コスト削減」の計画も、航空機を実際に動かす現場を含む、全社に打ち出されているようです。JALでは昨年の改善命令以降、「安全は最大のサービス」ということを「スローガン」にしているようですから、すべての方針・計画は、この合言葉を忠実に守るものとして、「再検討」すべきではないかと感じます。

 ※また、1月16日付朝日新聞報道によれば、
国交省が再指示に踏み切ったきっかけは、
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12月26日;成田/台北の日本アジア航空便で非常用脱出装置が作動しない状態で飛行
1月7日:逆噴射装置作動不可で着陸(整備ミス)昨年7月にも同じケースが発生していた。
などと言われています。この二つのトラブルについては、詳しい内容を、別途提起致したいと考えております。

~インシデントの連続は、「大事故」への道、
   「社会問題」として、本気で取り上げなければ・・・。~

 年末にかけて、これまで水面下に隠されていた「建築確認偽装問題」が、社会的に明らかになりました。今も不安とやりきれない思いで新年を迎えざるを得ない方々が沢山おられると思いますと胸が痛くなります。
公共交通機関においても、「JR西日本脱線の痛ましい事故」、そして年末に至っても「連続する航空のトラブル」、共通しているのは、「安全より利益を」の姿勢、そして「安全への規制緩和」でチェック機能もその任を果たさなくなっている、という実態です。
多くの犠牲者を出した「JAL123便御巣鷹山事故」から20年の年に、国交省からJALに対する業務改善命令が出されました。皮肉な現実です。
12月22日:
  国土交通省は、3月の事業改善命令後に日本航空に対し続けてきた立ち入り検査の結果をまとめ、発表しました。その概要は、「安全への姿勢に改善が見られる」と確認したということです。しかし21日には、「エンジンの左右誤装着が明らかになる」など、しており、同省はさらに監視を続けるということでした。
12月26日:
脱出装置使えないまま飛行=「再発防止不十分」と謝罪-JAL系機(日本アジア航空)
というインシデントも発生。
12月27日:
「日航は“大企業病”」ということをメインに、有識者会議(座長/柳田邦男氏)が改革を提言したと報じられました。
国交省→
  各エアラインに対して、もちろんJALに対しても「コスト削減の徹底」を勧めつつ、そのためには「安全への規制緩和」という点でも監督官庁として、協力するに近い形で航空法の改訂を行ってきました。こうした姿勢がどういう事態を招いているかという点には、まるで振り返る様子が見られないのは、片手落ちのような気が致します。その上、簡単に「改善が見られる」と断じてしまうのは、慎重さに欠けるのではないのでしょうか。
有識者会議の提言内容→
提言の詳細を目にしてはおりませんので、軽々しくは論じられないところですが、のべ4ヶ月かかり、出した結論が「組織の硬直化など“大企業病”が進行している」と厳しく診断した、ということですと、少々問題ではないかと考えます。つまり、これは、新しい所見でもなく、1972年、今から34年前です。私が乗務を開始して5年目、ニューデリー・モスクワ連続事故の同じ年、日本航空自身が研究所に依頼して調査した結果「巨大なる中小企業」、あるいは「人間関係は大企業として例を見ないほど悪い」「仕事への不満、疲労度が高い」「上司への不信は、調査の目盛りに入りきれないほど高い」などと公表されておりました。社内のものであれば、「何をいまさら・・。」という次元の提起ではないでしょうか。問題なのは、このように連綿として引きずってきた事態をどんな具体的な方法で解決するかということです。まくら言葉だけで改善できるようなことであれば、事ここに至ってはいないのですから。
まして、「重大な経営の方針を実践してきた、また今後も進める企業の中枢部門」と「経営の責任も権限も持たない現場」とをごちゃ混ぜにして、「全社員の発想の転換が必要」ということでは、何のための第三者有識者会議なのかと考え込んでしまいます。これでは、「安全運航第一」「安全こそ最大の商品」などとスローガンばかりありき、あるいは名目ばかりの「○○安全対策本部設置」などで、実際の中味は、安全と逆行してきた歴史に、どんな効き目が得られるのか、疑問を持ってしまいます。運航の現場や事故ご遺族の100名の方達と話したということですから、いっそ、今度はまったく違う100名の方たちに「この提言で明るい期待が持てるか」と率直に聞いてみてはどうでしょうか。
正直に申し上げて、「マッハの恐怖」を著された柳田氏座長ということで、私は、若干の期待もしていたのですが、誠に残念、という気も致します。
とはいうものの、全乗客の生命を預かる航空機の運航は、休みなく続いています。
きたる 2006年も 微力ながら、利用者の立場に立った声のボリュームを上げて、「コメント」を発信し続けたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

※ 1月16日付「朝日新聞朝刊」より
       

 ■トラブル防止策の再提出、日航に指示 国交省が異例の措置
 安全上のトラブルが続いている日本航空に対し、国土交通省が再発防止策を再提出するよう指示していたことが分かった。再提出の指示は前例がない。昨年年明け以降に続発した深刻なトラブルが先月末から再発しており、同省は「このままでは安全が確保できない」と判断した。改善しなければ日航は運航停止処分となり、減便など利用客に直接、影響が出る事態に至る恐れも出てきた。
 国交省は9日、羽根田勝夫副社長を呼び、再提出を指示する文書を手渡した。日航は今月10日にグループ各社の幹部らを集め、新たな指示に対する対策を協議した。
 国交省が異例の措置に踏み切ったきっかけのひとつは、先月26日に成田発台北行きが、不時着時などに乗客が機外に脱出するための非常用スライドが作動しない状態で飛行していたトラブルだった。客室乗務員が装置を正しく理解していなかったことが原因で、乗客の安全確保を定めた航空法に違反する行為だった。
 国交省は、昨年3月に起きた同様のトラブルをきっかけに、日航に事業改善命令を出した。日航は翌4月、再発防止策を提出したが同様のトラブルが再発し、改善が進まない裏付けと見られた。
 さらに今月7日、大阪発鹿児島行きで、機体に二つあるエンジンの一つで、着陸後の減速に使う逆噴射装置が作動しないトラブルが起きた。整備士が装置を作動させないための安全ピンを抜き忘れたことが原因で、こちらも昨年7月、同様のトラブルが起きていた。
 日航は今秋をめどに、旧日本エアシステムとの経営の完全統合を予定している。昨年4月に提出した再発防止策は「経営統合を進める過程でグループ内の風通しが悪く、情報共有や意思疎通が不十分だった」と原因を分析。グループ内の運航や整備に関する手順を再確認し、マニュアルの表記を統一するといった再発防止策をまとめ、実際に作業を進めた。
 しかし、同様のトラブルが続いたことで国交省は「このまま完全統合を急げば、安全運航は確保できない」と判断した。
◆日航を巡る主なトラブルと動き
【05年】
2月25日 ジャンボ機5機が強度不足の規定外部品で飛行していたことが発覚
 3月16日 羽田発新千歳行き旅客機が非常用脱出装置を作動させず飛行
  17日 国交省が事業改善命令
4月14日 日航が再発防止策を国交省に提出
6月15日 羽田空港への着陸便の前脚のタイヤ2本が外れ、滑走路上で滑走不能に
7月24日 羽田発機が整備ミスで逆噴射装置が作動しない状態で新千歳空港に着陸
8月12日 福岡空港を離陸したJAL系機のエンジンが異常燃焼。多数の部品落下
12月26日 成田発台北行き子会社便で非常用脱出装置が正常に動かない状態で飛行
【06年】
1月7日 大阪発鹿児島行きが逆噴射装置が働かない状態で着陸

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