NHK朝の連続ドラマ「こころ」をみて。

主人公は、浅草の老舗「鰻や」さんの娘、そして仕事は、客室乗務員という設定です。
私が、まず感じたことは、客室乗務員をしていながら、周囲からちやほやされるわけでもなく、ごく普通に社会生活を送り、隣の、また町の人たちに、良くなじんでいることです。
また、「スッチー」というあまり心地よくない呼称に、イメージされるような、ちゃらちゃらとした浮つきが全く感じられません。
これは、いままでのスチュワーデス物のドラマでは、見られない斬新さがあり、驚きであり、感心します。
演出・脚本のこまやかさに頭が下がる気がします。
どうも、主人公は、国内線だけ乗務している設定のように思われますが、それにしても、こうした一般的な社会生活になじんだ生活が送れる背景には、かなり長い時間をかけて獲得してきた働くものとしての権利に支えれていることに、ついつい、想いをはせてしまいます。
何しろ、私がフライトするようになった頃は、客室乗務員は、30歳で、また結婚したら、やめねばいけないことになってまして、今では考えられない状況がごくフツーでしたから・・。
今は、結婚後、出産後の乗務もOKとなり、定年制も改善されて他の女性社員と変らなくなりました。
さて、飛ぶことを自分の生涯の夢としてきた、主人公「こころ」。(ここは、GOOD LUCKの主人公新海コーパイと通じるものですが・・。)
そして、ストーリーは、今、フライトは続けたい、しかし、一方で、果敢に良き妻、良き母でもありたいと苦闘する主人公「こころ」の心に光を当てているところです。
先日、ニュースでも報道されていたように、各エアラインでは、”家庭(子供)を持ち、FLTしている客室乗務員に対して、スケジュール上、これまで国内線の深夜便免除という対応をしていたところを、JALの場合、「人数を区切って抽選でで決め、外れたものは、他の乗務員と同じ扱いにする」ということが発表され、厚生労働省の指導まではいる事態になったことが、思い出されます。
子供を持ちながらフライトしているものには、つらいことです。
主人公「こころ」に対しては、勿論、ドラマ制作スタッフに対しても、”困難に負けず頑張れ”と声援を送りたくなります。

ドラマ「GOOD LUCK」を見て所感!(4)

ついに、エンディングでした
このエンディングしかないと思っていても、やはり実際にハッピーなラストを見て、ほっとしました。航空の専門家も、ドラマの中につい浸ってしまうくらいですから、脚本も、出演の皆さんの熱演も、スタッフの努力も、三位一体であげた高視聴率だと思えます。
ストーリー的には、文句なしのできばえだと思いますので、あまり細かなことは、申し上げない方がよいかなとは、感じますが、最後のシーンで、新海コーパイがP.A(アナウンス)で、
「いつか、またお会いしましょう。」とパートⅡの可能性を示唆していますので、今後の参考のためにもいくつか。
1.前回、今回にふんだんに出て来るシーンですが、国際線で到着したはずが、なぜか、羽田になったり、その逆もあったりで、航空業界あるいは、旅行なれしている方からは、「違和感ある。」
「視聴者には、わからないだろうとたかをくくってるのかなあ。」などの声が多くあがってました。
2.機内の停電という設定でしたが、かつては、航空機関士(フライトエンジニア略してF/E)という3人目のコックピットクルーが乗務しており、こんなシチュエーションには、キャビンに出てきて、チェック、並びに修復にあたったものでした。機材がハイテク化されたからという理由で、前述のF/Eという名のコックピットクルーは、はずされ、本来は、操縦を専門とした操縦士2名(機長、副操縦士)のみの乗務になってきています。いまさらながら、やはり、F/Eが必要だと
実感させられました。
たまたま、整備士の 歩美(柴咲コウさん)さんが乗客として乗っていたこと、また、バックアップのキャプテン(内藤ジェーン)がもう1名乗務していたことが、新海コーパイのキャビン内での自由な動きを支える源になっていた、そして、パニクッていた機内の混乱を最小限に収めることが出来たものと考えます。ドラマの構成上やむを得ないところがありますが、客室乗務員の果たすべき役割が、今ひとつとなっていたのは、残念ですが・・。
ドラマの中でも、操縦士は、操縦の専門家であって、メンテナンスの専門家ではないことを、明らかにしており、よく練られていると思いました。
3.ホノルル到着後、旅客が全員降機したあとは、クルーも、アメリカのイミグレーション上の要請では、速やかに降機しなければなりません。従って、ドラマのように誰もいない機内で、香田キャプテンと富樫チーフCAがゆっくり話をすることなどはできません。
また、到着後は、停電した原因(配線のショート)状況などを、ホノルルの整備担当に説明したり、清掃その他関係者がどどっと入ってきます。よけいなことですが・・・。
4.これも、余計なことですが、ホノルル到着後、新海コーパイが、制服のまま(それも半そででなく、ジャケットまで着たまま)ビーチに行くというのは、無理がありすぎで、シーン設定は、私服でも充分効果はでたと思われますが・・・。
これだけ、多くの日本人が、ハワイに行った経験がある中で、ありえないことは知っているわけですから、かえって安っぽくしているように感じます。
5.新海コーパイロットのP.A(機内アナウンス)に日本語のあとに英語をフォローする場面が少なすぎるように感じます。もっとも、旅客は皆日本人 という設定なのかもしれませんが・・。
とりあえず・・・。

ドラマ「GOOD LUCK」を見て所感!(3)

新海君、そして香田キャプテンと、形は、違っても、空が好き、空への飽くなき思い入れ、が良く描けていて、30年飛んできた私でも、思わず泣けました。
私の場合、自ら飛行機を降りましたが、今でも、時折夢を見ます。
制服で、空港にショウアップすると、パスポートを忘れてきていた、とか乗務の時間に間に合わないとか、飛行機が墜落していく途中、大地が迫ってくる場面とか、主に仕事上決して犯してはいけないミスや、心の底で決意を固めていた事柄が中心です。降りてから、はや6年が過ぎましたが、潜在的に飛んでいる自分から逃げられないようです。
パイロットとパーサーという職種は違っても、空で生きてきたことは同じで、ドラマとは言え、新海君の気持ち、香田さんの気持ち、がじわりと伝わってきます。
物理的、身体的に飛べなくなることは、パイロットの身になると息の根をたたれることと同義語です。このことが、いよいよテーマとして大きく展開、
今回は、舞台まわりで気になることもほとんどなく、航空関係者、航空ファンの誰もが、本来のストーリーに入り込めた秀作と思います。「良かった」の一言。
最終回、ハッピーエンドを期待してしまいます。

ドラマ「GOOD LUCK」を見て所感!(2)

3月9日 オンエア- を見て感動でした。
第一に、業界の者として、細かな問題(ドラマを盛り上げる上で必要な舞台仕立てには、後で記すようないくつかのサジェスチョン)は、あるものの航空を舞台にしたドラマとして、脚本のよさ、俳優の皆さんの熱演(特に木村拓哉さんのパイロットとしての演技)があって、これほど違和感なく見ることが出来たことは、はじめてであり、そのことに感動です。
単に、憧れの職場と言うことに乗って、面白おかしく描くというよりも、基本にヒューマンな題材が敷かれていることが、そのように感じさせるものと思います。第二に、みていて不自然に感じたことが、かなり直されていることです。
【サジェスチョン】
★今回のことでは、ありませんが、前オンエア-のなかで、新海コーパイロットが旅客に対して、英語のアナウンスをする際に、最後に「good luck」と入れていましたが、これはおかしいと感じます。「have a good time」あるいは「have a nice flight」が自然でしょう。乗客を安全に運ぶ使命・責任をもつ者がgood luck では、大変、無責任に聞こえます。
★ドラマの構成上、やむを得ないことだったのでしょうが、コックピットクルーとキャビンクルーがいつも一緒に飛んでいると言う設定は、無理がありすぎです。全日空ってそんななの?という誤解さえ与えかねません。今回の中では、黒木さんが、大連から、新海コーパイがソウルから帰着し、オペレーションセンター(空港内オフィス)で出会うと言う設定がされており、リアルでした。
★堤さん演じる香田チェッカー(監査)が、休んでいたことが事故の原因かのような描き方に、そんなことを言ったらパイロットは病気をしないで生活できるのか、と心配をしていましたが、今回の中で、黒木さんの口からは、「事故を起こした香田さん」のような発言はあったものの、整備士柴咲さんにこれを、否定させており、ほっとしました。
 乗務を仕事とする者の常識としては、健康の自己管理は当然ですが、病気になった場合は、その症状をよく把握し、勇気を持って早めに休まざるを得ないことを、会社のスケジュール担当に知らせることです。このことが、悪影響を最小限に押さえることになります。無理は、しないということです。あくまで、乗客の命 を預かっているのですから。
段田さん演じる大田チーフパーサーのセリフですが、もともと、全日空には、男性客室乗務員がいなかったこともあるので、わからないのでしょうが、コックピットクルーとの会話の語調が実におかしいものがあります。
 操縦と客室の別はあっても、どちらのクルーも、乗客をA地点からB地点まで「安全にかつ快適に運ぶ」仕事を分担しながら、チームワーク良く成し遂げてゆく点で平等です。コックピットと言えども、旅客ではなく、ましてや旅客以上であるわけがありませんが、大田チーフパーサーのコックピットクルーに対する物言いは、馬鹿丁寧というか、卑屈と言うか、過ぎるものがあります。
 これでは、業界以外の方に、「パイロットは、殿様か」と言う誤解さえ与えかねません。
★前回ですが、タービュランス(気流の悪いところを通過中に、飛行機がゆれる)のときに、客室乗務員も着席、という設定でしたが、このとき内山さん演じるCAが、キャーと言う悲鳴をあげました。あんな、ごく日常的にある状況下で悲鳴をあげて、乗客に無用な不安を与えるようなCAは、存在しません。
 どこの航空会社でも、すぐ乗務停止とされてもおかしくない行動です。
 CAの皆さんも毎フライトごと命がけの気持ちをもって真剣に仕事をしていることですから、いくらドラマといっても、ちょっと馬鹿にされている心地がするのではないでしょうか。
★前回オンエア-の分ですが、香田監査から当該便のキャプテンが、成田/バンコックでキャプテン失格を言い渡され、バンコックで悩んだ後、成田到着後に退役することを、バンコック出発前に、明らかにしたというくだりですが、パイロットにこのようなストレスがかかることを、全日空では、本当に行っているのでしょうか。監査(査察)の結果は、全フライト終了・帰着後に行うのが、常識と思えるのですが・・。ドラマと言っても、今後の旅客に無用な不安を投げかけることは、避けたほうが良いと思われますが・・。

ドラマ「GOOD LUCK」を見て所感!(1)

ドラマ[goodluck」の所感をいくつか。(2月/23日放映)
フライトプラン作成時、不測の事態に備え、必ずオルタネート(代替)の空港がセットされています。この場合、北京から帰着時、新千歳にということで自然です。また、国際線の場合、最終的にNARITAに戻ります。通関、イミグレイションの問題もありますので・・。よくある例としては、羽田にいったん着陸、霧の晴れるのを待って、NARITAへ戻るケースです。
そして、安全第一の問題ですが、航空会社としては、無理をしてでもとは、決して言いませんが、
「安全も大事だが、コストマインドも大事」と言うことを、有形、無形にパイロット、整備、客室など現場部門にプレッシャ-をかけています。
こうした状況下では、ダイブアウト(ダイバージョンともいいます)をするとホテル代、初め種々の経費、翌日以降のシップローテーションの狂いなどでコストは、かさみます。
こうしたことを考えると、パイロットの判断は、大変難しいものになります。
 1977(昭和52)年9月27日夕刻、羽田発マレーシア・クアラルンプール経由シンガポール行き日本航空715便DC-8-62型(JA8051)が、クアラルンプール空港に着陸進入中、空港手前7.7Km付近にある郊外のゴム園(標高約80mの丘)に墜落した。
 この事故で乗員乗客のうち34名が死亡し、44名が重軽傷を負った。
 事故当時、空港周辺は悪天であり、VOR/ADF進入を行っていた。事故原因としてマレーシア民間航空局は機長が滑走路を視認することなく最終決定高度以下に降下したこと、この点について副操縦士が是正を要求しなかったことなどを指摘した。
この事故については、 当時他の航空会社はクアラルンプール空港への着陸は危険として、ほとんどが、シンガポール空港へダイブアウトしていた中、日本航空機は激しいシャワーレインの中アプローチを敢行したものだった。
最近では、中国国際航空機墜落事故 釜山・金海空港 2002.4.15 がありますがこれも天候特に風が着陸を難しくしており、当該航空機以外は、他の空港へダイブアウト、あるいは、釜山へのフライトをキャンセルしていたと言う事態でした。
このように、無理を重ねると乗客を危険な状態におくことになります。ドラマののなかでの、キャプテンの判断は、まず新千歳にダイブアウトし、フュ-エル(燃料)を充分サプライした後、NARITAへのアプローチを行っており、安全確保の上で正しい判断と感じます。
次にこうして必死のフライトを終えてきたcaptain、coーPIが遅く帰着したからと言って、「約束をすっぽかされた。」という黒木瞳さん演じるチーフC/Aの発言は、同じ航空機で命をともにする職種の方の発言とは思えません。
また、女性整備士の対応も、[本当に、ご苦労様!」と言うぬくもりが感じられず、逆に、命を常に的にして働いているフライトクルーと整備の現場の一体感の希薄さを表わしているのでしょうかと深読みをしてしまいす。
まだまだ、ありますが、とりあえずこの辺で・・・。