JAL機、片肺エンジンで着陸!

~実は、私も経験しました・・。~

3月13日のANAボンバルディア機の胴体着陸に続き、4月2日、JALの最新鋭機B-777(略称トリプル)のエンジンオーバーヒートということで、片側エンジンだけでの着陸となりました。多くの方は、「えっ!」と驚かされたことと思います。後の発表では、「計器の誤表示」だったことが判明しましたが・・・。

 2007040305143525jijpsociview001

(着陸後のB-777機)

当日は、テレビ各局が着陸の様子を「生放送」していたこともあり、ショッキングな話題を投げかけました。
私は、この時、出張で北海道に居り、移動中の車の中で事態を知りました。航空関係者、特にパイロットやメカニックや客室乗務員など現場のことを知るものは、エンジンなどが火を噴いているわけでもないようなので「つつがなく着陸できるだろう」と安心しておりました。結果は、ご承知のとおりの「完璧なランディング」を果たし、事なきを得ました。

~エンジントラブルだけなら、安心です~
この時の航行中の状況をもう少し詳しく説明(推定)致しますと、
1. 右翼エンジンの温度が上昇している旨の警告が計器上表示された。
2. この警告は、エンジン停止をすべきカテゴリーのもの(3段階の警告の中で)であった
3. 片側エンジンを停止した場合、かつての機材では、手動で推進力のバランスをとらねばなりませんが、B-777機の場合、コンピューターがエンジンの推力と尾翼の調整を自動的に行うようになっているため、
4. パイロットは、通常より慎重に「着陸」の操縦を行うことで、あまり慌てることもない状況だったと思えます。
また、言うまでもないことですが、当然こうした事態を想定した「訓練」は行われていますから、パイロットの対応能力は、ほぼ万全です。

2007040305143523jijpsociview001
(着陸後のB-777機右エンジン)

~アンカレッジから東京へ向っていた時に~
さて、かつて私も太平洋上で、同じような体験を致しました。アンカレッジ・アラスカ/東京間のことでした。ちょうど航路の半分を飛行した頃でした。シップ(機材)は、DC-8型機でしたので、4発のエンジンですが、1発が不調となり、バランスを取るために反対側の2発のうち1発もエンジン停止させました。この当時は、現在の機材のように、コンピューター化されていなかった訳ですので、その後に、もし残り2発のうちひとつでもトラブルを起こせば、相当困難な「操縦」を余儀なくさせられる環境でした。太平洋上で、です。

Dc8_03 (DC-8型機)

乗客は、深い眠りについていたこともありまして、このトラブルをしばらく伏せて飛行しました。外も明るくなったころ、コックピットからは、キャプテンがトラブル状況を説明、また、このアナウンスをフォローする形で実際に旅客と体面する私はじめ客室乗務員が総出で、事情を説明しました。

なにしろ、エンジンの推力が4発が2発になった訳ですから、当然フライトタイムも約2倍かかることになりました。
機内の旅客に「到着まで、時間はかかるが、安全上は心配ない」ことを理解していただくには相当なエネルギーが要ったことを覚えています。「パニック コントロール」できるかどうかの正念場でもありました。

ちなみに、この当時は、「ニュース」にもならない出来事でした。

~フライトタイムの短い国内線でのエンジン停止は、
      さまざまな問題があります~

さて、かつて欧米を始め長距離を飛行する国際線では、時にはこうしたエンジン停止もあったように思います。しかし、たった1時間前後のフライトタイムの国内線で、エンジンを停止せざるを得ないという事態は、今後の問題点を示唆しているような気が致します。

☆ 航空機関士がいないパイロット2人乗務で果たしていいのかという問題です。
  パイロットは、機内の航行機関システムについては、ほとんど知らなくて良いのが実態ですから、パネルに表れた「警告=ウォーニング」の指示のまま、操作をせざるを得ません。技術革新の一方で、「計器の誤表示か?」「本当に故障か?」の見分けがつきにくい実態です。この結果「引き返し」「緊急着陸」などのトラブル件数が増えている点もあります。航行中、システム(エンジン、油圧系、空調系などのシステム)を監視し、調整する専門職(航空機関士)乗務の必要性も検討のひとつにのせる必要があるのではないかとも思えます。

☆  「今回のケース」は、「エンジン温度を感知するセンサーの電線接続部分に水付着があり、これが原因で温度上昇の誤表示」が起こったとみられています。
ANA・天草エアラインのトラブルでは、「時間に迫られた飛行間整備の甘さ」も指摘されました。JAL・ANAを問わず、「整備の委託、外国への外注化」「整備士資格制度」「キャリーオーバースタンダード(故障持ち越し基準)」に代表される整備のあり方が見直しが迫られているのではないでしょうか。

~機付き整備士制度ももはやなく・・・。~

私が乗務をしていたころ、と言ってももう10年になりますが、「個々の機体には整備場の主治医」とも言える「機付整備士」がついていました。画像では見ずらいのですが、機長、副操縦士、チーフパーサーと並んで、機付整備長ということで、旅客の前に責任者たることを明示していました。コストカットの波に洗われる中、その後この制度は「廃止」されました。

Photo_4

2 thoughts on “JAL機、片肺エンジンで着陸!
  1. はじめまして。
    「エンジン温度を感知するセンサーの電線接続部分に水付着があり、これが原因で温度上昇の誤表示」が起きた件については、おっしゃる通り、他のエンジン諸元を見れば「誤検知か否か」の判断は出来る可能性もあったかと思います。
    ただ、当該機種の現行の運航マニュアルでは恐らく、アブノーマル時の対処要領として「この警報が出たらエンジン停止」が製造メーカー指示として明記されているのではないでしょうか。
    高度なシステムの航空機になればなるほど、不具合の要因が増えていきます。FEに要求される技術・知識の水準レベルも段違いに上がります。それを避けるために、(言葉は悪いですが)警報・対処要領に関しては人間側の選択肢があまりないような機体の設計になっているのでしょうね。
    FEを復活させるためには、警報のあり方や、製造業者指示の対処要領も含めて、検討が必要になるかと思います。業界で、具体的にそのような動きはあるのでしょうか?(ちなみに当方はFE復活賛成派です。)

  2. こんにちは。
    機付き整備士制度は85年の事故から生まれたカウンターアクションの一環として発足したもので、当初は2名だったとういう記憶があります。言葉は悪いですが「いつまで続くものやら」と思っていました(私はJAL関係者ではありません)。どの業界にもかかわらず大事故を起すと必ずいってもいいほど+αで出来もしない対策まで講じられる傾向があります。それが制度と現実のギャップを生じいつしか有名無実化され、責任の所在があいまいになって盲点ができ、次の事故への伏線になる。制度自体には理想的なモノがあったが、その制度が有効に機能していたかどうかは疑問である。「できない制度は作らない」、「できないことはしない」。安全対策において「見直し」はもちろんのこと「切り捨てる」ことも有効な手段であることを理解してもらえるとありがたい(ヒューマンファクター関係者として)

Comments are closed.