JAL/JASの完全統合とは・・・。

~とっくに一つになっていたのでは?~

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利用者からは、「なにを今更・・。」と言う感想は当然至極のことで、あちこちで聞き及びました。この点について少々説明を加えれば、合併にあたっては、これまでまず「JALシステム」というホールディング会社を設立、その中に「JALインターナショナル=旧JAL国際線」「JAL ジャパン=JAS」が事業会社として存在すると言うしくみとなっていました。これまでの実態でした。運航の現場では、パイロットは、もともと機種によってライセンスがあるわけですから、エアバスA-300、MD80,90シリーズをメインとするJAS・JALジャパンと、ボーイング747、767、777を主力とするJALインターナショナルでは、相互が入れ替わって乗務するなどは、あり得ない事でした。また、整備面においても、整備機種・整備マニュアルが全く違う訳ですから、安全上も形だけ統一するのも無意味なこととなっていました。Jal100206_23 客室乗務員においても、やはり機種が違う、パイロットとのコミュニケーションのとり方、搭乗から降機に至るまでのマニュアルが違うなどと言う実態で、すり合わせてみると、40項目のうち30項目以上違うと言うことが最近明らかになってきたようです。現場での問題点をかいつまんで申し上げましたが、ひとことで「合併・統一」といってもこのように山のような問題点を抱えているのが内情です。少しでも「運航の安全」に関わるようなことは、「心配は要らない。このように措置している」旨の社会的開示も工夫する余地はありそうです。

~晴れやかな「宣伝・セレブレーション」の陰に・・・~

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さて、10月1日に「JAL完全統合」ということが大きな「ニュース」になっておりました。羽田空港では「歴代スチュワーデスの制服を着用させて盛大なセレブレーションが催された模様です。もともと、JAL/JASは2001年11月に統合が発表されました。当時の金子社長舩曳会長のもとで。合併に至るまでの条件がどういうことにあり、現在どういう影響を及ぼしているのかは後に述べます。

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2001年以来、現実的には、会社のロゴは統一され、国内各ステーションのカウンターもひとつになり、タイムテーブル上もすべての便名は「JAL」と表示されています。勿論 JAS航空機の塗装もとっくに模様変えされて久しくなります。

●安全運航上の問題●合併時にJAS側に約束してきたJAS社員の処遇上の問題●JALインターナショナル(旧JAL)側の人件費労働環境を更にコストカットすると言う問題などが「JAL経営」にとって重い負荷となってのしかかっています。

もとより、当時の金子社長体制は、

1.国際線のアライアンスには、参加迎合しない。加盟するとしても[JAL」中心と言う枠組みでなければならな  い。

2.国内線では、ANA追撃のため、路線網拡大を至上命題とする。そのために、大手の企業が手を差し伸べることをしり込みしていた「赤字で、機材更新に莫大な資金を要するJAS」を傘下に加える。

3.おりしも、整備でいえば、子会社を設立して外注、更にシンガポール・中国などへの外注化で自社整備方式の放棄、またJALグループ全体で、パイロットの外人化、CAは契約社員化、カウンターは制服だけ同じでもすべて子会社化、など、「安全」に直結する経費までカットしてゆくことに邁進しました。このことが、後に国交省航空局から「事業改善命令」を受ける事態にまで至っていったことは、衆知の事実となっている。

言わば、現状のJALは、「こうした過去の遺産」をそのままパスされている訳ですから、「おざなりの処置」では、「栄光の日本の翼」へ回帰することなど出来ません。

~8つの労働組合の意味するものとは・・~

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JALには、「多くの労働組合があって、大変だ」「何でそんなに分かれているの?」という疑問が良く寄せられます。もともと、経営側からすれば、「リストラでも、給与のダウン、労働環境の悪化」でも、言ってみれば同じそろばんであり、現場で働く者の権利や会社へのロイヤリティー、モチベーションを度外視すれば、「何でもOKという労働組合」をかわいがりたいものです。簡単に言えば、「JAL」の場合、職種に応じてもともとあった組合に対抗してより経営に協力的な組合を擁護する政策をとってきた、長いですねぇこれが。少なくとも私の乗務してきた30年間はこの政策を死守してきていました。更に具体的に言えば、JALでは、整備・営業・空港カウンターなどを組織した日本航空労働組合と全日本航空労働組合、パイロット・フライトエンジニアでは、日本航空乗員組合(副操縦士・航空機関士)、日本航空機長組合(機長管理職としたため管理職組合)、日本航空先任航空機関士組合、客室乗務員では、日本航空客室乗務員組合、後に加えて全日本航空労働組合の客室乗務員支部設立、そしてJAS統合の後には、JASに存在した現JALジャパン労働組合(地上)、JALジャパン乗員組合、JALジャパンキャビンクルーユニオン(客室乗務員)を加えて、実に9つの労働組合です。現在では、客室乗務員においては、JALキャビンクルーユニオンとして一部統一が果たされ、計8つの組合となっています。

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労働組合問題は深いので、これ以上は触れませんが、例えば労使間でのやり取りは、「ANA」といえどもそう変わりはありませんが、決定的に違うのは「職種職場ごとに対立するような複数組合があるわけではない」とうことです。これは日ごろの現場業務の中で、社員同士のコミュニケーション、会社へのロイヤリティー上からいいますと、断然の違いがあるといえます。ANAの明るさの秘密はここにあるのかもしれません。

~現場の声をフィードバックする妨げに~

こういう事態は山崎豊子さんの「沈まぬ太陽」にかなり、リアルに描かれています。こうしたお家事情は、「安全保持」「信頼回復」への足かせになっていることは、JALにたずさわってきたものであれば、意見は多少違っても「良いことではない」と言う点で一致していると思います。空の現場では、本来労働組合の提起する問題でもないことでも、「明日の命」に関わることですから「要求」として出てゆきます。経営サイドからすると「要求を呑む訳には行かない」と多くの経営サイドが「まずいな」と思っていても自縄自縛に陥り、小手先の「言葉だけ安全第一」で通過してしまいます。少なくともこれが30年以上は続いているわけですから、事態は深刻でしょう。

また、完全統一へ向けての「社内で大問題」となっていることですが、金子・船曳間で取り交わされた合併に当たっての「約束」として、「JAS社員の労働条件は一切現行を切り下げない」と言う存在があります。このことが切り下げるだけ切り下げてきたJAL社員の労働条件より、あらゆる職種において上回っている差別となって表れてきていることです。そして更に現場のコストカットをしてゆく具体案が出されており、複雑でギクシャクした社内模様を呈しています。

私の手元に調査の結果がありますが、JAL<JAS「40代で月10万円、住宅手当など入れれば年間数百万円のちがい」となります。こうした矛盾を単に「低い方にあわせる」方針に固執せず、両社内の「モチベーション アップ」につながるような解決策が臨まれているようです。これこそ「経営者の手腕」が問われるところでしょう。

~難題を抱えた以上、「火中の栗を拾う」覚悟がないと~

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JALでは、財務出身ということで期待もされた西松社長でしたが、6月の株主総会宛挨拶では、「安全運航は、『まず心の問題』」などと述べており、「社員の心構えが悪い」といわんばかりで、経営として本質的に癌となっているところはどこかと言うことを捕らえているのだろうか、と疑わせる発言をしています。まさに「危機感」とは縁遠い雰囲気を感じます。その2日後、総会には内緒で、「新株発行」を発表、社会を呆れさせました。

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そして、今回の10月1日「JAL完全統合」のインタビューでは、きっちりやることはやって再生は真近いのでは・・。」といとも簡単に「問題を認識し」更に天気予報士の様な、他人事のようなご託宣です。その上、「信頼回復は基本命題」「この1年いやというほど信頼を失うと会社がどうなるか・・身にしみて感じさせられた。」と述べています。今頃気が付いたのでしょうか?これまで「利用者からの信頼は自然と降ってくると思っていたのかも知れない」と思わせる発言で、苦労を重ねている現場には、きついものと思えます。なんでもないといえばなんでもない、「晴れの式典・会見」でのコメントでありました。

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~利用者に直結の具体的な話~

ほんの一例ですが・・・。元JASの使用機だった「MD機」は現在4名の客室乗務員が配置されていますが、ドアが4箇所あることに対応しています。これを「完全統一を機会に」と3名にするということを考えています。非常事態に周囲を判断し一刻も早く乗客を脱出させる観点から言えば「危なっかしい」話だと思います。「事業改善命令」を受けた折の国会では「安全に関わることは、コスト削減の対象にはしない」と言う趣旨の答弁をされていたような記憶があるのですが・・。

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「JAL/JAS 統合」については、その「功罪」と言う点では、サイト上では話し足らないと感じて取り上げることを躊躇しておりましたが、少しだけお話させて戴きました。

なお、10月2日、フジテレビ「めざましテレビ」でもコメントを致しました。