国産発のジェット機「MRJ」をめぐって・・・。

~相変わらず、決断が早いANA社、それには~

 全日空(ANA)は3月27日、三菱重工業が開発している国産初のジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」を購入すると発表しました。10機の予約発注権を含む計25機を注文したということです。こうした予約は、三菱重工の航空機製造への道に、確かな灯りをともすことになります。もっとも、世界のリージョナル機(100席以下の小型機)の今後の需要見通しが5000機、そのうち1000機の獲得が目標ですから、この25機は、最初の踏み出しです。10年は赤字を覚悟という峠も越えねばなりません。無事「ロールアウト」すれば、「YS11」以来、40年ぶりに国産旅客機の雄姿を見れることになります。

それにしても、JALに先行して、「発注の決断」したことについては、次世代機「B-787」への発注(世界で一番早くデリバーされる予定)と重なってその経営判断の早さに特徴が伺えます。

もっとも、ANAとしては、本来、リージョナルジェットのコミューター分野では、高知線を中心に今もトラブルが絶えない「ボンバルディア機」への今後の対策については、頭を悩ましていたところであると同時に、カナダ・ボンバル社とシェアーを争っているブラジルの「エンブラエル」機を選択すべきだったのでは・・・などの責任も問われかねない状況にありました。ちなみに、「エンブラエル機」は、アメリカの「良質格安エアライン」として経営好調な「ジェットブルー社」では、A-320と並んでコミューター向けのメイン機材として投入されています。(100機保有)

また、国内ローカル線、近距離アジアの国際線においては、JALとの激しいシェア争いに加えて、日本上陸を虎視眈々と狙う「アジアの格安エアライン群」の気配も後ろにあります。ANAとしては、1月に新機種選定委員会を設置。ブラジルのエンブラエル機を比較対象に、座席数90~100の小型機導入を検討してきました。燃費効率を30%上げられる、低騒音や二酸化炭素の排出量も少ない、ということも判断のポイントになっているようです。

~「世界のトヨタが出資」の安心感~

しかし、なんといっても「YS-11」での苦い体験(=三菱重工が採算がとれず、生産中止。部品の供給も受けられなくなった。)を担保できると考えたのは、「世界のブランド・トヨタ」の出資があったからこそとも言えるのではないでしょうか。開発には、最低でも1500億円かかるといわれる中、国が500億円、三菱重工が600億円、残り400億円のうち、100億円を「トヨタ」が出資する模様です。

1兆円の利益を上げている「トヨタ」の100億ですから、小さいといえば小さいものですが、「世界一の企業」が後ろについているという安心感は頷けるものがあります。3月はじめに「トヨタ出資」のニュース(下記資料)が発表されてから、発注までのスピードには、驚くばかりです。

~JALは検討中~

国内だけではなく、長距離国際線にも目をやった機材計画を立てねばならないJALは、検討中とのことです。これも当然といえば当然ともいえます。

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ジェット機製造、トヨタ参加へ 三菱重工系に出資
         2008年03月05日03時00分
asahi.com
 三菱重工業が進める国産小型ジェット旅客機の開発計画に、トヨタ自動車が参加する方向で最終調整を進めていることが4日、分かった。三菱重工が主体となって設立するジェット機製造の事業会社に、トヨタが100億円程度、資本参加する方向だという。トヨタが航空機産業に乗り出せば、初めてとなる。国産ジェット旅客機構想は 、政府が旗振り役となって進めてきたが、1500億円ともいわれる開発費が課題の一つだった。トヨタは豊富な資金力に加え、自動車生産で世界一という高い知名度もある。トヨタの参加によって、プロペラ旅客機YS11以来の国産旅客機の実現に弾みがつきそうだ。 三菱重工は航空会社からの事前受注の状況をにらみつつ、3月末に国産ジェット旅客機の事業化を最終決定する。そのうえで4月に資金調達や航空機開発の主体となる事業会社を設立する方針だ。資本金は1000億円程度で三菱重工が約6割を出資、三菱商事も出資するほか、国内の航空機関連メーカーや商社、銀行などに広く出資を呼びかけていた。

 ジェット機計画は「MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)」の名前で、三菱重工が03年から研究を開始。12年の就航をめざす。座席数が70席前後と90席前後の2種類あり、機体の30%に日本が得意とする炭素繊維複合材を使って軽量化し、燃費を大幅に改善する。 三菱重工は100機程度の事前受注を受けた上で事業化を決定する方針を打ち出しているが、日本航空や全日空の国内航空会社のほか、欧米航空会社も関心を示しているという。すでに昨秋、エンジン生産を米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)が担当することを決めたのに続き、2月には主要システムを作るサプライヤー5社を決定するなど、準備を着々と進めていた。 トヨタは本業の自動車以外にロボットや航空機事業に関心を示しており、創業者の豊田喜一郎も1930年代の創業期、航空機の研究を進めていたことが記録に残っている。91年には航空機事業を戦略的に展開する部署を開設したが、事故により断念していた。

One thought on “国産発のジェット機「MRJ」をめぐって・・・。
  1. 旅客機の製造は利益が出にくい分野だが、今度の機種はプライベートジェットとしては需要が見込めないだろうか? YS11は空中衝突防止装置装着が無理なため日本の空をとべなくなったが、国産機の技術力は保持したいものです>

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