あの「事故」がなければ・・・どうなっていたのだろう?

1970年代~80年代。航空では墜落事故が相次ぎました。「ニューデリー・モスクワ・クアラルンプール・羽田沖・御巣鷹山123便」。この時70年代でもメディアは、一斉に(朝日新聞は、「伸びすぎた翼」という特集まで組んで)「安全軽視・コスト優先」の経営姿勢を糾弾してきました。

空の厄年? 民間大型機事故、既に26件 犠牲者900人超す

朝日新聞 1988.10.6
香港、米国、中南米、タイ、そしてエチオピア。世界のあちこちで旅客機が相次いで落ちている。今年に入って6日までに、民間大型機の死亡事故は26件を数え、犠牲者は約920人。このまま推移すると、1985年に次ぐ「厄年」になりかねない勢いだ。日本の空は、幸い、比較的平穏を保っているが、占いの暦に「航空事故に巻き込まれる恐れの強い日」のご託宣までお目見えする時世。海外を旅する日本人が急増しているだけに、「空の異変」は他人事ではすまされない。(田仲拓二記者)

《悲劇の連鎖》「世界の航空事故の状態は、2年ないし3年の周期で波動している。どうも、今年はまた悪くなる気配がする」。日本航空機操縦士協会の機関誌「パイロット」1月号で、こう不吉な予言をしたのは、航空安全問題に詳しい黒田勲早大教授だ。残念ながら、それが、当たってしまいそうな雲行きだ。航空評論家、関川栄一郎さんも「辰(たつ)年は事故が多いといわれてきたが、今年も例外ではなくなりそうだ」という。

今年に入って発生した主な航空事故は別表の通りだが、民間大型機が絡む死傷事故ないしは重大なトラブルは計85件。このうち、乗客や乗員に死者や行方不明を出した事故は26件、犠牲者は920余人となった。

国際民間航空機関(ICAO)や欧米の航空専門雑誌などの情報から、この10年間の世界の航空事故を分析すると、最悪だったのは、あの日航ジャンボ機が群馬県内の山中に墜落し、死者520人を出した85年。この年は、世界中で39件の航空死亡事故が発生し、犠牲者は1800人にのぼった。

翌86年は、31件、607人と減少。87年も夏ごろまでは平年並みの動きだったが、11月末にモーリシャス沖で南アフリカ航空のジャンボ機が墜落し160人全員が犠牲となり、次いで、ビルマ沖で115人を乗せた大韓航空B707が行方不明となって暗転。結局、36件、1167人を記録した。今年は、その悲劇の連鎖を断ち切れないままでいる。

ICAOの統計では、この20年間に100万飛行時間当たりの死亡事故件数は3件から1.3件に、100万着陸回数当たりの死亡事故件数は4件から1.9件に改善された。とはいうものの、年間700万人以上の日本人が海外に出ているだけに、航空事故が与える社会的な衝撃力は強まっている。

《安全ぼけ》「魔の11分間」という言葉がある。航空事故は、離陸滑走開始後の3分間と、着陸前の8分間に発生する率が高いことを表す。今年の事故・トラブルのうちハイジャックに遭った2件を除いて83件をみてみると、離陸時に17件、着陸時に31件発生。全体の57%を占めており、依然、警句が生きていることを裏付けている。

原因がまだはっきりしない事故も多いが、37件はエンジンや脚などの機体トラブルが絡んでいたのではないかとみられる。

4月、ハワイ上空で、機体の天井部が吹き飛んだアロハ航空B737事故は、日航ジャンボ機事故に続いて、整備・点検のあり方を問い直した。19年間飛び続けていた事故機の胴体の一部に金属疲労や腐食による亀裂ができていたのに、見逃されていたのではないかとの疑いが強いからだ。米国連邦航空局(FAA)も、老朽機の安全対策に本腰を入れ始めた。飛ばしてもいい旅客機の「年齢制限」をつくる動きもある。

6月、フランスの空港でデモ飛行中のエアバスA320が墜落した事故も衝撃を与えた。ハイテク装置を満載し、操縦の自動化が進んだ最新鋭機。フランスの航空当局は、パイロットの操縦ミスが原因と断定したが、コンピューターは万能ではないという「自動化の落とし穴」の教訓を、ハイテク機の導入を競う航空各社に突き付けた。

黒田教授は、今年の事故の特色として2つの傾向を指摘する。一点目は、中国やベトナムなどの航空機事故多発に関連し、開発途上国で急速に人の動きが活発化しているのに、運輸の手段、能力がその状況に合わなくなっている問題。2点目は、フランスのような先発技術国で、技術と安全性の関係について、過剰な自信を持ちすぎる傾向が目立ってきたことだ。黒田教授は「世界的に、『安全ぼけ』がまん延してきたのではないか」と警鐘を鳴らす。

《警報効果》日本の空の今年の幕開けも、騒然としていた。1月10日、東亜国内航空(現・日本エアシステム)のYS11が米子空港で離陸に失敗。その直後の同月18日には、千歳空港で全日空のトライスター機が着陸に失敗して滑走路を逸脱した。「いずれも死者はなかったとはいえ、一時はどうなることかと肝を冷やした。結果的には、あれが、警戒警報の役割を果たし、いい予防薬になっている」と、運輸省航空局幹部はいう。

運輸省航空事故調査委員会によると、これまでに、国内で26件の航空事故が起き、10人が亡くなっているが、大型旅客機の死亡事故はない。死者は、小型機関係に集中している。しかし、ベテラン調査官の1人は「胸をなでおろすわけにはいかない。海外での事故を聞くたびに、じわじわと外堀が埋められていく気分になる」と打ち明ける。不安の兆しは、国内にも、というのだ。

全日空は、1月に続いて、5月30日に、沖縄・下地島空港で訓練中のB737が滑走路を暴走する事故を起こした。日航、日本エアシステムを含めて、航空主要3社は、国際線へと翼を広げることを競い合う時代を迎えた。整備部門の下請け化、乗員編成をめぐる労使対立……。70年代前半、日航が連続事故を起こした当時の状況と比べながら、「伸びすぎた翼」の危うさを懸念する航空関係者は少なくない。

●1988年、世界で起きた主な航空事故

1・2 西独・コンドル航空のB737がトルコで墜落。16人死亡

1・18 中国で重慶に進入中の西南航空のイリューシン18が墜落。108人死亡

2・27 ソ連のシベリアでアエロフロート航空機が墜落。20人死亡

3・4 フランスでTAT航空機がパリ郊外に墜落。23人死亡

3・17 コロンビアでアビアンカ航空B727がククタ空港離陸後に墜落。138人死亡

4・28 米国・ハワイでアロハ航空のB737が飛行中に天井部を吹き飛ばされ、緊急着陸。59人負傷、1人行方不明

6・26 フランスの空港でデモ飛行中のフランス航空のA320が墜落。3人死亡、50人負傷

7・3 ペルシャ湾上空でイラン航空A300が米海軍巡洋艦に撃墜され、290人死亡

8・28 西独の米軍基地での航空ショーで曲技飛行中のイタリアのジェット機が空中衝突

8・31 香港で中国民航のトライデントが着陸に失敗。7人死亡、12人     負傷

8・31 米国・ダラスでデルタ航空のB727が墜落。13人死亡

8・31 メキシコで旅客機が山中に墜落。20人死亡

9・9 タイ・バンコクに着陸中のベトナム航空のツポレフ134が墜落。7     5人死亡

9・15 エチオピア北西部のバハルダール空港を離陸直後のエチオピ      ア航空B737がエンジンに鳥が飛び込んだため墜落。31人死      亡、2人行方不明

 

「航空」と「長距離ツアーバス輸送」と言う点では、輸送機関が違っても「それではコスト削減の風潮を、安全規制という厳しい国の縛りで守られているのか?」と言えば、いささか不安がつきまといます。現在は、「LCC」の経営擁護と言う角度で、「規制緩和」が続いているためです。

この「ツアーバス大事故」問題も、多くの犠牲者がでたことで、やっと国交省が動き、8割もの違反会社が明るみに出たものです。

電車やバスなど地上輸送期間の場合、大事故を起こしても、幸運な場合生存者も存在しますが、超高速で空間を移動するこうくうきの場合は、殆どが航空機と運命を共にしているのが「事故の歴史」です。

違法か違法すれすれが常態化していた「ツアーバスの実態」も現場ではとうに疑問や心配が充満していたはずです。現場からの告発さえあれば、あるいは、そういう声を取り上げるべき大メディアの動きが鋭ければ、犠牲者を出さなくて済んでいたのではないか、という側面も凝視してしまいます。「乗客のいのちを守る」仕事のプライドを大切にしてゆきたいもの、と改めて感じました。

ツアーバス8割で違反 国交省監査、長時間運転や日雇い

朝日新聞 2012.7.18

全国の高速ツアーバス会社の8割で、道路運送法の規定に反する問題が見つかったと国土交通省が18日、発表した。運転手の乗務時間が上限を超えるなど安全上の問題が多く、約2割では重大な違反が指摘された。 群馬県の関越自動車道で46人が死傷した高速ツアーバス事故を受けた監査。過去1年間に監査していなかった298社を調べた。同省は問題のあった会社に、年内に処分や警告をする方針。 国交省によると、道路運送法違反を指摘したのは計250社(84%)。特に多かったのは、連続運転は4時間までといった乗務時間の違反で、計192社(64%)で見つかった。 48社では、運転手に対する乗務前後の健康チェックが不十分だった疑いがあった。禁じられている日雇い運転手は22社で確認された。同様に禁じられている名義貸しも1社で確認された。 重大な違反があったのは48社(16%)。乗務時間の上限を超える勤務を何度も運転手にさせたり、日雇いの運転手を複数雇ったりしていたという。 また、国交省はこの日、関越道の事故を起こした運転手の河野化山被告(44)=自動車運転過失致死傷罪などで起訴=に対し、所有するバス4台を60日間の使用停止とする行政処分をした。(川見能人)

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